JR東日本が取り組むIoT、ビッグデータ、人工知能--「モビリティ革命」で目指すもの

日沼諭史 別井貴志 (編集部)2017年01月16日 10時00分
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 東日本旅客鉄道(JR東日本)は11月8日、「技術革新中長期ビジョン(PDF)」を公表した。「IoTやビッグデータ、AI等」を活用することで、同社事業における「安全・安心」「サービス&マーケティング」「オペレーション&メンテナンス」「エネルギー・環境」の4分野で新しい価値を生み出す「モビリティ革命」の実現を目指すという内容だ。

 歴史が長く、われわれにとって最も身近な公共交通機関の1つである鉄道が、この中長期ビジョンによってどう変わっていくのだろうか。同社執行役員でありJR東日本研究開発センター所長の横山淳氏に話を聞いた。

 なお、横山氏は、2月22~23日に開催されるイベント「CNET Japan Live:ビジネスに必須となるA.Iの可能性」において、「IoT×AIで実現するJR東日本の技術イノベーション」と題したキーノートスピーチを予定している。


東日本旅客鉄道株式会社 執行役員 JR東日本研究開発センター所長の横山 淳氏

センシングにより一歩先の安全・安心を実現する

――まず、JR東日本研究開発センターについて教えていただけますか。

 JR東日本研究開発センターは、鉄道の安全、サービス、メンテナンス、環境といった幅広い分野について研究しています。このスピード時代に次々と新しいサービスや技術を取り入れて、より安全に、よりコストをかけずに良いサービスを提供していく必要があるため、当社内に研究開発センターを設けているわけです。これとは別に、鉄道総合技術研究所という、同じように鉄道にかかわる研究開発を行っている公益財団法人が、鉄道に関する全体的な基礎研究を手がけています。

――11月にIoTやビッグデータ、AIを活用するという中長期ビジョンを発表されました。具体的にどういう経緯で策定されたのでしょうか。

 われわれとしては、IoTやビッグデータ、AIなどを使った新しいサービスが生まれる時代がすでに始まっていると認識しています。特に、クルマの自動運転、コネクテッドカー、シェアリングエコノミーなど、モビリティに関して大きな動きがあるのは非常に意識しているところです。といっても、クルマがそうだからわれわれも、というわけではなく、バックボーンにIoT、ビッグデータといった技術を用いて、新しいモビリティサービスを提供していくべき時代になっているのだろうと。

 日本で鉄道は公共交通の大きな柱です。クルマ業界とも連携しながら、日本の中でのモビリティ革命をわれわれが中心になってやっていけば、大きな流れを起こせるのではないかと考えています。基礎になる流れは“技術”ですし、これに力を入れて外に向けて明確に打ち出すことで、他社ともいろいろなコラボレーションがやりやすくなるでしょう。われわれだけではできないところもあるので、スタートアップ企業などとも一緒にやっていきたいと考えています。

――「安全・安心」「サービス&マーケティング」「オペレーション&メンテナンス」「エネルギー・環境」という4つの分野で新しい価値を生み出す、というところの中身を具体的に教えてください。

 「安全・安心」は、われわれにとって一番大事なことで、常に高めていかなければなりません。鉄道は100年以上の歴史がありますので、失敗から学ぶといいますか、いろいろな事故なりトラブルなりを克服してきて、ここまできたという自負心があります。そして今やいろいろなセンサを張り巡らすことで、見えなかったものもどんどん見える時代になってきました。過去のノウハウだけでなく、センサを活用することで、安全・安心も一歩先をいけるはずだと。

センサなどを活用した災害等のリスク低減
センサなどを活用した災害等のリスク低減

 例えば、これまでは車両や施設が故障した場合や、防災面で懸念があったりする場所は、直接目で見に行く必要がありました。地方のローカル線の山がちなところは、特に防災が大きな課題です。危険な箇所を全部コンクリートなどで固めてしまうわけにはいきませんし、すべての懸念箇所で山の上まで見に行くということもできません。雨が降ったら運行を止めるということにすれば安全上の問題はクリアできますが、そういうわけにもいきませんから、安全を保ちつつサービスを提供することが大事になります。

 そういう場合であっても、これからはセンサやドローンのような技術で常にセンシングして、データや画像で見たり、ささいな予兆を検知したりすることで、見に行けなかった場所もいつでも見ることができ、雪崩などの事故を防ぐなどして、安全・安心を高められるだろうと考えています。また営業車でモニタリングすれば、線路の状態が毎日わかるようにもなります。

ITS、ロボットを活用して踏切やホームの安全性を向上
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