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JR東日本が取り組むIoT、ビッグデータ、人工知能--「モビリティ革命」で目指すもの - (page 3)

日沼諭史 別井貴志 (編集部)2017年01月16日 10時00分
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ベテラン技術者の思考をAIで再現し、効率的なトラブル対処へ

――そのようなフレキシブルなサービスという意味では、「オペレーション&メンテナンス」の進化は必須になりますね。

 われわれは非常に大きく複雑な路線網を持っていて、ひとたびダイヤが乱れると、収束に時間がかかります。トラブルからできるだけ早く回復し、異なる路線や鉄道会社間での乗り入れにも影響をおよぼさないことが求められています。

 どの列車がどのくらい遅れていて、どれくらいお客さまが乗っているのかは分かりますから、そのシチュエーションで一番良い案内方法や回復方法が何かを考え“運転整理”を行っています。今はそれをベテランの技術者が担当しているんですが、運転整理は非常に複雑なパズルのようなものです。そこで、何が最適解かというKPIを決め、データ分析にAIを活用することで、その作業を代替する方法を模索しています。

 お客さまには直接は関係ありませんが、AIは車両運用にも活用できます。10両と5両の編成を連結して湘南新宿ラインを走らせていたりしますが、あれはどこででも連結したり、離したりできるわけではありません。明日はどこそこの駅から15両で走らせる、ということになれば、夜のうちにそこまで移動させておかなければならないわけです。

 また、車両の検査スケジュールは厳しく決められていますので、今日中にどこそこに移動しないと検査ができないとか、そういう制約もあります。こういった非常に複雑な解を最適にするのは、AI、ビッグデータ分析が有用です。今はまだ一部しかできていませんが、ベテランの人に頼っている状況から、将来的にはAIとビッグデータでもっと最適な運用にできるのではないかと考えています。

――AIは人の仕事を奪うと言われることもあります。しかし、今の話をお聞きすると、鉄道の運行はベテラン技術者によってある意味属人化している状態で、経験値をデータに落として、誰でもオペレーションできるようにしないと、将来的には無理が出てきますよね。

 スタッフの世代交代がありますので、別の人に継承するというのは非常に大事なことです。また、ベテラン技術者にしても、毎日必ずいるわけではありません。AIでベテラン技術者の暗黙知を機械学習させることによって見える化すれば、いつでも最適な判断ができるようになるのではないかと思います。

 例えば、信号機故障という言葉を聞くことがあると思いますが、あれは何か線路上でトラブルがあると信号を赤にして安全のために列車を止めるようにしていて、結果的に信号機故障という呼び方になっているだけなんです。本当の原因はもちろんたくさんあり得ますが、レールが折れても、ケーブルが切れても、ポイント石が挟まっても、大元の電気設備が故障しても、結果的に信号を赤にするので「信号機故障」ということになる。なので、それだけでは何が原因かは分からないわけです。

 ですが、ベテランの技術者は、トラブルの細かなところを見て、「たぶんあそこの絶縁がおかいしいんじゃないか」と気付けるわけですね。もちろん経験だけで考えているのではなく、知識や理論もベースになっていますが、かなりの確率で当たります。そういう時は故障からの回復が早いのですが、経験のない人はやみくもに調べることになって、当然時間がかかってしまいます。

 でも幸いなことに、過去のトラブルの事例はたくさんあります。こういう事象があり、ここの設備はこうなっていて、検査履歴はこうだ、というデータをコンピュータに読み込ませて機械学習させることで、ベテランの思考と同じようなアルゴリズムで、ベテランと同じような判断ができるようになります。そういった判断を機械に任せることができれば、その分人間の方は今まで手が回らなかったこともできるようになります。

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