“馬鹿正直”になることが、顧客の不安を取り除く--コスモスイニシア流の不動産テック - (page 2)

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中古住宅の資産価値を再評価できる仕組みを作る

――ところで、コスモスイニシアは新築住宅も販売していますが、今回のサービスは中古物件のビジネス拡大を狙ったものです。中古物件の流通強化については国も政策として掲げているように大きなテーマだと思いますが、この点についてどのような課題意識を持っていますか。

木下氏:中古住宅分野については、前述の仲介事業だけでなく、中古住宅を買い取ってリノベーションして再販するというビジネスも3年前に立ち上げました。私もその立ち上げに携わったのですが、その経験から感じたものは、中古住宅を巡る課題は流通や取引だけでなく物件そのものにも存在しているのではないかということです。

中村氏:中古住宅であっても、良質な物件であればきちんと修繕して世の中に流通させれば、それで満足してくれる顧客は必ずいると思います。そういう意味では、私たちは流通を担う企業としてだけではなくメーカーとしての役割もあると思います。その両輪で中古住宅ビジネスを拡大させたいですね。

中村氏
「中古住宅でも、良質な物件を修繕すれば価値が生まれる」と語る中村陽子氏

――ちなみに物件が抱える課題というのは、具体的にどのようなものでしょうか。

中村氏:たとえば、マンションによっては、内装工事をしても簡単に修繕できないような課題、つまり建物構造上の問題や管理の課題などを抱えている物件や、部屋の間取りや設備、配管の設計がニーズと大きくズレている物件もあったりします。そういった物件は流通だけでは解決できませんよね。

 こうした物件は、評価によっては避けることもあれば、メーカーとして買い取り・修繕する場合もあります。中古物件の評価をするために、社内ルールで決めた50項目ほどのチェックシートがあり、そのスコアがあまりに低い=問題点が多すぎる物件に関しては買い取りをしないようにしているのです。

――中古住宅の買い取り・修繕による再価値化ができるのは強いですね。ネガティブな点が多い中古住宅は売り出しても買い手がつかず、見捨てられることも多そうです。

木下氏:国が出した統計によると、日本人がこれまで住宅に投資した資金(=土地住宅の購入金額)は経年劣化によりどんどん目減りしてしまい、国土交通省がまとめた「中古住宅市場活性化ラウンドテーブル報告書」によると、これまでに国全体で500兆円という資産価値の損失が生まれているそうです。私はこれが大きな問題だと思っています。

 コンクリート(の建物)は建築物ごとに異なりますが60年から100年は品質を保持できると言われています。それで作られた建物の価値が短期間で失われてしまうというのは、メーカーとしても非常に残念です。築20~30年の家に実際に住んでいる人は、築年数を不安に感じることは実は少ないですよね。だから、築年数が長いことが悪いということは、一概に言えないと思います。

 その意味でも、中古住宅がちゃんと再評価される市場を作っていきたいです。今回のRENONAVIを通じて、顧客への情報提供を強化していくというスタンスを、我々にできる中古住宅市場の課題解決の第一歩にしたいですね。私たちは前身のリクルートコスモスの時代から、情報を世の中に積極的に開示して市場にインパクトを生み出すという発想を強く持った企業風土でした。今回の取り組みは、そうした潜在的な風土が生み出したものだと思います。

マンション管理分野におけるテクノロジの活用が、次の社会課題になる

――リアルエステートテックの領域ではテクノロジ分野のベンチャー企業も多数参入してイノベーションを生み出そうとしていますが、業界の枠組みを超えたパートナーシステムの構築についてはどのように考えていますか。

木下氏:今回のサービスは自社開発でしたが、今後ベンチャー企業とのパートナーシップについては喜んで検討したいと思っています。今までリアルエステートテックに携わる企業とは一通り交流していますが、良いビジネススキームが組めるのであればぜひ一緒に挑戦したいですね。

 情報や商品(物件)を提供する立場としては、圧倒的な情報量をユーザーにとって使いやすい形に加工・提供できる仕組みを構築できるテクノロジや、ネット上でのマーケティングに強みを持つテクノロジには関心があります。私たちはウェブのノウハウが乏しいので、それを補ってくれるテクノロジを活用できればいいですね。

木下氏
「テクノロジベンチャーとの協業は積極的に推進したい」と語る木下氏

――不動産企業には価格情報や相場推移、取引情報といったビッグデータが膨大に眠っていると思いますが、今後はどのように活用したいと考えていますか。

木下氏:データは膨大にあるのですが、まだその活用方法に悩んでいるのが正直なところです。たとえば、マンションの新築時の情報とその後の取引履歴、現在の査定価格とリフォームした場合の査定試算といったデータは、当社が建築した物件に限らずある程度保持しているのですが、これをどのように活用して開示すればいいのか、開示しないほうがいいのかといった点については、まだ結論が出ていない状況です。

――最後に、不動産ビジネスにおけるテクノロジの活用について構想を聞かせてください。

木下氏:テクノロジを活用することで、顧客の利便性向上と業界全体の価値向上がマッチする部分を見つけていきたいと考えています。

 私が次に注目したいのは、マンション管理におけるテクノロジの活用です。マンションの管理や修繕に関する課題は、数年後には社会問題化するのではないかと思っており、その領域でどのような情報を収集して顧客に提供すれば社会が良くなるのかを真剣に考えていきたいです。

 たとえば、マンションごとの設備の状態、修繕状況や管理費・修繕積立金の収支状況といった情報は、依然としてアナログで管理されており情報も散在しているのが現状です。世の中ではあまり話題になっていませんが、世帯数が減少していく今後は大きな問題になるのではないでしょうか。築20年を超える物件が増加していく今後は、こうした情報をテクノロジによってどのように収集・整理できるかが大きな課題になると思います。

 この話は、リアルエステートテックよりもIoTに考え方が近いかもしれません。建物にセンサを付けてデータを収集すれば、よく使われている部分とそうではない部分とで修繕に対する考え方が変わってきたり、修繕が必要な部分に先手を打って住民と管理会社のトラブルを防いだりといった対処ができると考えています。

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