資生堂が推し進める世界に勝てるブランド強化--JCMO 音部氏 - (page 2)

別井貴志 (編集部)2016年11月21日 07時30分
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――これまでお話しいただいた「ブランドは意味付けすること」や「タッチポイントごとの顧客の認識、体験変化を重要視する」、「ブランドにとってベネフィットは1つだがインサイトは多数ある」「マーケターとしてデジタルで実現できること」などを、実際にマーケティングの組織に浸透させるのはかなり難しそうですが。

「ブランドは意味づけすること」と音部氏 「ブランドは意味づけすること」と音部氏

 音部氏:私はブランドマネジメントをずっとやってきてますが、化粧品自体をそんなにやってきたわけではないんです。でも、資生堂のマーケターは化粧品ばかりずっと手がけてきたのです。そのため、こういうやり方がいいんじゃないかと私が言ったところで、それこそ包丁屋さんに包丁の説明をするようなもので、あまり意味がありません。では、なにができるかというと、マーケティングを属人化させないことです。

 資生堂に限ったことではありませんが、マーケターの仕事は属人化することが多いのです。「なぜこのマーケティング施策はうまくいったのですか」と言った場合に、「なぜなら○○さんがうまくやったからです」と。そして、「なぜいまはうまくいってないのですか」と言った場合に、「○○さんが広報に異動になったためです」といった具合になるのです。ブランドマネジメントというのは、永続的にブランドを維持、存続させることに意義があるので、人が代わったからといってころころ変わってもらっては困ります。持続性を高めるために、非属人化させなければいけません。属人的にしないためには、仕組みに依存すればいいのです。そのため、私が手がけているのは、化粧品のマーケティングをしている人たちに共通の構造を提供することなのです。言い換えれば、共通言語でありフォーマットです。

 たとえば「ブランド」という言葉ひとつとっても、各人がいろいろな意味づけや定義を持っていたとしても「ブランドは意味である」ということを共有しています。エリクシールなんて言葉はありませんでしたし、「TSUBAKI」にいたっては植物の名前だったんです。ここに新しい意味を付与していく作業をするわけですから、どうやって意味づけをするのか、じゃあその意味付けをどのようにマーケティングプランに落とし込んでいこうかといった手法をフォーマット化するのです。フォーマットと言うと、「これを書いてください」というようなことを想像するかも知れませんが、「こういう時には、こういう考え方をしましょう」という考え方のフレームワークを共通で認識し、実践しているのです。こうすれば、マーケティングがうまくいったときに、どういう視点から何を思ってこういうマーケティングプランになったかが、きちんとたどれます。プランのどこがよかったのかが後で理解できれば再現性も生まれます。

――そうした意識を組織に根づかせる枠組みづくりは非常に大事だと思いますが、マーケティング活動や施策を実行していくと、ふと気づいたら本来の目的からずれてしまっていたということがありがちではないですか。

音部氏:たしかにそうした面はあるでしょう。たとえば、「サンプリングのための商品を配布する」という案件があった場合にその目的を聞くと、「今回のサンプリングの目的は1人でも多くのお客さまに出会うことです」と堂々と返してくるケースが少なくないでしょう。でも、それはサンプリングの定義や描写を言っているだけです。目的が何かを考える機会に恵まれていないと、「何のためにやっているの?」、「お客さまに配るため」となりがちです。トライアルが目的で配布するのであっても、リピートにつなげたい場合、配布する商品は1つだけでなく複数がいいかもしれませんし、配布する人は意味がありそうな人に限定するべきかも知れません。アウェアネスが目的で配布するならば、配布する商品は1つでいいかもしれませんが、配布する人はできるだけ多くの人がいいかもしれません。目的によって、やり方が変わります。そのため、マーケティングにおいて何のためにやるのかという目的を明示し、常に意識することを重視しています。

CNET Japan CMO Award受賞
資生堂ジャパンの執行役員 マーケティング本部長(JCMO)の音部大輔氏は、「第4回CNET Japan CMO Awardを受賞。12月7日開催の「CNET Japan Conference 2016」で表彰式が開催され、パネルディスカッションにも登壇する。

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