ITと人の融合が、日本の不動産ビジネスを変える--CNET Japan Conference 2016

 朝日インタラクティブはこのほど、ビッグデータやAIを活用した「Real Estate Tech(不動産テック)」と呼ばれるビジネスの変革が著しい不動産ビジネスに焦点を当てたイベント「テクノロジが創世する不動産産業の新潮流 ~Real Estate Tech 2016 Summer~」を開催した。

 「『RealEstateTech』で変わる国内の中古住宅流通市場の活性化」と題したパネルディスカッションでは、ビッグデータ解析プラットフォームを提供するトレジャーデータのマーケティングディレクターである堀内健后氏、不動産情報プラットフォーム「IESHIL(イエシル)」を運営するリブセンスの不動産ユニットリーダーである芳賀一生氏、同じくリブセンスの村田健介氏が、2016年に入って急速に注目が高まっているReal Estate Techの本質について語った。

(左から)トレジャーデータの堀内氏、リブセンスの芳賀氏と村田氏
(左から)トレジャーデータの堀内氏、リブセンスの芳賀氏と村田氏

IESHILのサービスを実現した不動産ビッグデータ活用とは

 冒頭でトレジャーデータの堀内氏は、FinTechやReal Estate Techに代表される非IT産業におけるデータとテクノロジの活用について、「これまでは、データを蓄積するためにはサーバを自前で用意してデータウェアハウスを数年かけて構築して、初期費用も数億円かかるような世界だった。しかし、こうした環境をクラウドで提供できるようになったことで、初期費用もなくすぐに導入ができ、保守もスケーラビリティも担保されるようになった。一方で、ユーザーのモバイルシフトによってデータが大量に発生する時代になり、それを処理する基盤が求められるようになった。この両輪が“〇〇×Tech”と言われる変革を生み出している」と説明。不動産ビジネスにおけるデータとテクノロジの活用事例として、トレジャーデータがデータ解析プラットフォーム、機械学習プラットフォームを提供しているリブセンスのIESHILのデータ活用事例を紹介した。

IESHILのデータ活用事例を紹介するトレジャーデータの堀内氏
IESHILのデータ活用事例を紹介するトレジャーデータの堀内氏

 IESHILの開発を担当しているリブセンスの村田氏は、近年のReal Estate Techの特徴について、人工知能や機械学習を活用した物件の価格推定がどのようなメカニズムで行われているのかを解説。具体的には、「重回帰分析」という手法を用いて物件の経年劣化や平米数に応じた価格上昇率といった様々な評価係数を算出し、その係数を足し合わせることで一般的な不動産鑑定評価で使われる評価方法のうち積算で評価額を算出する「原価法」と呼ばれる計算式による物件の価格推定ができるのだという。

 「これまでは勘や経験に頼っていた評価係数を積算していたものを機械学習によって自動的に算出できる。膨大な情報を処理したことで実現できる仕組みだ」(村田氏)。

IESHILで算出された経年係数のパラメータ推移
IESHILで算出された経年係数のパラメータ推移
IESHILで算出された東京都23区の平米数に応じた価格上昇推移
IESHILで算出された東京都23区の平米数に応じた価格上昇推移

 村田氏によると、こうした大量のデータ処理を行う重回帰分析を実現するためには、不動産業界や物件価格形成の実務知識に加えて、統計や数学的知識、高度なプログラミング、係数のチューニング、多変量の係数処理に耐えられるコンピューティング環境が求められる。それが大きな課題となるのだが、トレジャーデータのデータ解析プラットフォームと機械学習プラットフォーム「Hivemall」というクラウド環境を活用したことでエンジニアリングを効率化し、サービスの立ち上げスピードを加速させたのだという。

 また村田氏は、「こうしたデータ解析環境を実現したことで、中古マンションの価格推定や地域ごとの価格変動指数(インデックス価格)、地域ごとの経年劣化による値下がり率など導き出せるデータは多い」と指摘。さらに、不動産ビッグデータを活用したReal Estate Techのカギとなるのは「データの掛け合わせ」だと説明した。

不動産ビッグデータ解析
不動産ビッグデータ解析と移動時間を掛け合わせることでエリア選定を効率化できる

 不動産ビッグデータを単純に整理して統計を出すだけでなく、それに地域性や時間、路線情報など様々な係数を掛け合わせることで、住み替えエリアの効率的な選定や不動産価値の深い評価など様々な活用方法が可能になるというのだ。「データを掛け合わせることで、物件購入者に後悔のない物件選びの手助けができたり、不動産業者には営業効率の向上が見込めるデータが提供できるのではないか」(村田氏)。

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