Appleの共同創業者であるSteve Jobs氏は、2007年1月に「iPhone」を発表した際、これとは別の大ニュースでも見出しを飾った。「Macintosh」で誰もが知るブランドになった同社が社名から「Computer」を外し、単に「Apple Inc.」となったのだ。
Jobs氏は、サンフランシスコで開催したMacworld Expoで、歓声を上げる5000人を超えるファンに、「われわれはMacと『iPod』を投入した。さらに『Apple TV』、そして今回iPhoneを追加した。そこで、これを反映する社名にするべきなのではないかと考えた」と語った。
10年近くがたち、あの賭けは、Jobs氏が実によく未来を見通していたことを示している。Appleはニッチなコンピュータメーカーから一般向け電子機器の巨人へと変貌し、年商2160億ドルの3分の2近くがiPhoneになった。「MacBook」というブランド名で販売されているノートブックを合わせても、Macは売り上げのわずか11%でしかない。もっとも、Macの売り上げは1年間で200億ドル以上と、それでも相当大きい。
こうした数字を挙げるのは、Jobs氏が2010年から「ポストPC」時代を説くようになり、いずれコンピュータよりもモバイルデバイスが好まれるようになると語ったからだ。また、Macの筋金入りのファンたちが、Appleはコンピュータを軽視し、iPhone、iPad、「Apple Watch」にかまけていると不満を述べている理由も、理解しやすくなる。
こうしてこの日を迎えた。
Appleの初の本当のノートブック(約7.3kgの「Macintosh Portable」は除く)として「PowerBook」が登場してから25年と1週間後の米国時間10月27日、最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏が、最も高価でパワフルなノートブックシリーズ「MacBook Pro」の最新アーキテクチャを発表した。このニュースの2日前、同社はスマートフォン事業に低迷の兆しがあることを明らかにしていた。大ヒット製品であるiPhoneの年間販売台数が発売以来初の減少となり、決算が減収減益となったのだ。
どうしてこのタイミングになったのだろうか。
米CNETの独占インタビューで、マーケティング責任者のPhil Schiller氏、ソフトウェアエンジニアリングのトップであるCraig Federighi氏、デザインのトップであるJony Ive氏は、Macが重要である理由を説明してくれた。3氏がAppleにとってMacは非常に大切だと言うので、ノートブック最上位モデルの「マイルストーン」であり「大きな前進」だとする製品を提供するのに、4年4カ月と16日かかった理由を尋ねた。
「カレンダーに基づいて何かを決めることはない」。カリフォルニア州クパチーノのApple本社での90分間にわたるブリーフィングの中で、Schiller氏はこう語った。「チームに求めるのは素晴らしい仕事をすることであり、その素晴らしい仕事が1年でできることもあれば、3年かかることもある。(中略)われわれが本当に大切にしているのは、Macで新しいイノベーションを作り出し、長年にわたりAppleを真に定義づけてきた物語を続けていくことだ」
MacBook Proに関する最新の物語は、より薄い(ミリ単位でそぎ落とされている)、より軽い(旧モデルより数百グラム軽量化)など、注目すべき形容詞が満載だ。画面周りのベゼルもより狭くなり、設計担当者はこれまでと同じ13インチと15インチの高解像度Retinaディスプレイを、より小さな筐体に納めることに成功した。また、「iPhone 5s」で初めて搭載された指紋センサ「Touch ID」を取り入れ、本人確認や「Apple Pay」によるオンラインショッピングに使えるようになった。
しかし、今回のデザインが何によってノートブックの歴史に残ることになるのかといえば、キーボード上部のファンクションキーに置き換わる、細長いマルチタッチの領域だ。「Magic Toolbar」とうわさされていたが、Appleはシンプルに「Touch Bar」と名づけた。
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