手ごろな価格は「もちろん意識している」とSchiller氏は言う。「だが、設計の際に優先するのは価格ではない。Macに期待される体験と品質だ。そうすることで高価格帯の製品になってしまう場合もあるが、意図しているわけではなく、それだけのコストがかかるというだけのことだ」(Schiller氏)
今回の新型ノートブックが投入されるのは、盛り上がりに欠けるコンピュータ市場だ。何よりも、今はPCの買い換えサイクルが4年から6年ほどに伸びている。中国やインドのような新興国市場では、ノートブックを素通りしてスマートフォンやファブレットを求めるユーザーが多い。これはAppleの言うポストPC時代の到来を告げる兆候だ。その兆候は他にもある。調査会社Gartnerは、コンピュータの出荷台数が9月で8四半期連続の減少と発表しており、同社はこれを「PC業界の歴史上、最も長く続く減少傾向」と表現している。
にもかかわらず、Statistaがまとめたデータによると、Macの販売台数は過去10年間、2013年と2016年を除いて毎年増え続けているのだという。
Endpoint Technologies Associatesで長年PCアナリストを務めるRoger Kay氏は、次のように述べている。「Appleだからという理由で、大きな関心を寄せてもらえる。断言してもいいが、同社は新製品を投入するだけで、ある程度シェアを伸ばせるだろう」
Appleファンの情熱は、初代Macintoshにまでさかのぼる。スーパーボウルの歴史上最も有名とも言われるコマーシャルで紹介され、1984年に登場したオールインワンのデスクトップだ。このアイコン中心のOSとマウスを採用した2500ドルのコンピュータは、AppleのMacが楽しく簡単に使えるものであることを世界に示した。
Macにはそれ以来、カラー画面、グラフィックボード、非常に高速なデスクトップを実現するチップなど、次々に改良が加えられ、それを駆使して、デザイナー、映画制作者、写真家たちが創造性を発揮している。
「Macの目的はこれまでもずっと、仕事を楽にすることだった」。1984年にBerkeley Mac User Group(BMUG)を共同創設したRaines Cohen氏はこのように語る。BMUGは木曜日の夜に活発な会合を開き、新製品のデモンストレーションにJobs氏がたびたび招かれていた。「Appleは、店舗に並ぶまでの体験全体を1つにまとめ上げる。最終的な責任当事者が一貫していて、店舗スタッフから本社の人間までが成功のために取り組むという、あの感覚だ」(Cohen氏)
Macノートブックの勝利の方程式を導き出すには、もうしばらく時間がかかった。
意欲的ではあったが大きくて扱いにくい6500ドルの「Macintosh Portable」を打ち切ったAppleは、1991年の「PowerBook」でノートブックに本腰を入れた。トラックボールを組み込み、ノートブックのデザインを確立することになった初期の1台だ。その後登場した「iBook」は、鮮やかなカラー(タンジェリンやブルーベリーなど)のクラムシェル型だった。2006年にはMacBook Proが発表され、ここからMacBookシリーズが始まる。また、CPUがIBM製のチップから人気のIntel製プロセッサに切り替えられた。
この間に、Appleはミュージックプレーヤー「iPod」と、「iTunes Store」を発表している。
iPhoneが登場するころには、iPodとiTunesがAppleの売り上げの半分を占めるようになっていた。Macはもはや稼ぎ頭ではなくなり、売り上げに占める比率は38%にまで下がった。その変化から、Jobs氏は自身の製品戦略を「3本脚の椅子」と呼ぶようになる。iPhone、Mac、iPodの3製品が、改称したばかりの「Apple Inc.」を支える格好だ。
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