4月、インテルが全従業員の11%にあたる計1万2000人の人員削減を発表した。米拠点各地で数百人規模のレイオフが行われ、閉鎖される研究開発拠点もある。800人近くがレイオフされるオレゴン州では、同社が州最大の民間雇用主であり、地元経済に影響が出ると思われる。
インテルとの競争に敗れたAMDでも人員削減が続いているが、2015年秋、新たに全従業員の5%にあたる500人のレイオフをし、ディスクドライブメーカーのSeagateも1000人以上のレイオフを発表した。
低迷するPC市場から早々と撤退したIBMも業績不振の中、一株あたり利益の最大化を優先する経営方針で、過去数年、大幅な人員削減を繰り返している。4月、新たな人員削減を開始したが、削減数は世界的に1万4000人に達すると予測する調査会社もある。
近年、クラウドコンピューティングや認知コンピューティングに力を入れている同社では、人員削減は「新たな戦略に沿った労働力調整のため」というが、人員削減はクラウドコンピューティングや人工知能Watsonの部門にも及んでいる。
さらに、退職金として最高給料6カ月分が支給された過去の人員削減と違い、今回の退職金は、勤続年数にかかわらず給料の1カ月分に減額されている。(同社は2014年、年齢差別訴訟で敗訴しているにもかかわらず)クビを切られるのは中高年が主で、同社勤続20年以上の社員も退職金は給料1カ月分のみである。
一方、CEOは、就任後ずっと売上が下落を続けているにもかかわらず、年何百万ドルというボーナスを受け取っている。IBMの元社員によって運営されているFacebookページやブログでは、クビを切られた各国の元社員らがレイオフの詳細や怒りを投稿している。
IBMのグローバルテクノロジサービスで同社にITサービスをアウトソースした企業や州立大学には、ITスタッフが丸ごとIBMに転職するケースも珍しくないが、転職後、一年でクビを切られたという人たちもいる。
人員削減はカナダやヨーロッパでも行われており、900人が削減されるというドイツでは、先月から地元IBM社員によって抗議デモが行われている。
米国ではクビを切られる前、地元スタッフの教育のためにインドに派遣されたという元社員らもいる。
実は、米国人社員をクビにして、海外から人材を連れてくる傾向は、他の業界でも広まっている。フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドでも、IT職社員250人がクビを切られ、その後任としてアウトソース企業がインドからエンジニアを派遣した。退職金受給の条件として、レイオフされた社員は、派遣社員の教育を強いられたという。
本来、レイオフとは会社の業績が悪化したために職自体が廃止されるといった理由で行われるものなのだが、職はそのまま残り、安い労働力に置き換えるために雇用者が解雇されるケースが米国企業で相次いでいる。
失業して1年以上、仕事が見つからないディズニーの元社員らは、「就労ビザは適格な米国人労働者が見つからなかった場合のみ、米国人の雇用に悪影響を及ぼさないという条件で発行される決まりで、それに反した」とディズニーを訴えている。同様に、後任のインドからの派遣社員らを教育しなければならなかったカリフォルニアの電力会社の元社員らも、就労ビザに関し連邦政府を提訴している。
米大統領選に関し、日本ではトランプ候補ばかり取り上げ偏った報道が多いが、海外への雇用流出や海外からのエンジニア向け就労ビザの乱用に反対するトランプ候補や民主党のサンダーズ候補が票を集めているのには、こうした背景があるのだ。
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