“空間”そのものが広告領域になる--マイクロアド渡辺社長インタビュー

藤井涼 (編集部)2015年12月31日 08時00分
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 インターネット広告を主力事業とするマイクロアドは2015年、越境ECやインバウンド(訪日外国人向け施策)、さらにはドローンなどの新規事業を次々と立ち上げた。一見すると広告には直結せず、それぞれが独立しているように見えるが、いずれの事業にも「つながりがある」と同社代表取締役社長の渡辺健太郎氏は語る。この1年の取り組みを振り返ってもらいつつ、その言葉の真意を聞いた。

マイクロアド代表取締役社長の渡辺健太郎氏
マイクロアド代表取締役社長の渡辺健太郎氏

--なぜ、2015年は広告以外の事業にこれほど注力したのでしょうか。

 広告以外のものであるように見えてしまうと思うのですが、最終的には全てがつながるので、僕の中では(広告と)別のことをしているという感覚はないんです。たとえば、僕は昔よく百貨店で買い物をしていたのですが、最近はあまり行っていません。それでも、家には大量にDM(ダイレクトメール)が届きます。ただ、実際にいま新宿の百貨店などに行くと外国人ばかりなんですよ。つまり顧客層は変わっているのに、マーケティングや広告は従来の手法から変わっていないので、一番売上をもたらしてくれる顧客には届いていないんです。

 テレビもそうですよね。20~30代はもうあまりテレビを見ていないと思うのですが、その世代向けにもいまだにテレビのマーケティング予算が投下されている。そういう意味でいうと、既存のメディアを最適化することがアドテク会社がやっていることだと思うのですが、それだけだともう駄目なのかなと思います。リアルな購買データとかサイネージとか、幅広いメディアに対応していかないと、実態とかけ離れてしまうと思ったことが(新規事業を開始した)ベースとしてありますね。

--さまざまな方向からデータを取得することで、より正確にターゲットに広告を届けられるようにするということですね。それぞれの新規事業についても教えて下さい。2015年はアジアの現地メディアと提携して、積極的に訪日外国人旅行者向けの広告サービスの開発・販売や、メディア運営サービスを展開しました。

 確かに日本からみるとインバウンドになるのですが、海外からみたらアウトバウンドですよね。当たり前のことですが、結局インバウンドとアウトバウンドってセットじゃないですか。つまり、グローバルマーケティングなんですよ。

 たとえば、日本に来ている台湾人は日本で消費するけれど、それを生み出すためには、まず台湾のメディアを通して現地の人々とコミュニケーションしないといけない。そのために必要なパーツがたくさんあるのですが、それらはまだほとんど世の中にないので作っていかないといけない。それで、台湾に特化したワンパッケージ型の越境ECサービスを始めました。

訪日中国人旅行者向けの無料ショッピングバス
訪日中国人旅行者向けの無料ショッピングバス

 また、10月には国慶節に合わせた中国人観光客向けの無料ショッピングバスを走らせました。旅前、旅中、旅後みたいに言われていますが、外国人が日本に来てからアプローチできるタイミングが今はほぼないので、自社でバスを用意したんです。中国語の喋れる添乗員さんに乗ってもらって、中国人にはどんなニーズがあるのかをインタビューしたのですが、僕らなりにいろいろと新たな発見がありました。

 実は今回走らせていた無料バスは個人旅行用なんです。やはり、スケジュールが全部決まっているパッケージ型のツアーで爆買いをするという時代は永遠に続くわけではありません。ツアーは徐々に個人旅行にシフトしていくと思うので、そこへのニーズにいち早く対応していきたいと思っています。

 またANAとは、日本各地の魅力を伝える訪日外国人旅行者向けのサイト「ANA EXPERIENCE JAPAN」 を運営しています。外国人が日本に来る手段の大半は飛行機なので、そこからさらに地方へと誘導したいと思っています。もちろん従来のように日本の家電などを買ってもらうことも良いのですが、日本の魅力的な場所やその周辺の情報を届けるといったものは産業としてすごく大きくなると思っています。そうした魅力を伝えられる会社はまだ日本にはほとんどないので、我々が実現していきたいですね。

「ANA EXPERIENCE JAPAN」
「ANA EXPERIENCE JAPAN」

--11月には屋外のデジタルサイネージにリアルタイムに広告やニュース、エンタメ情報などを配信できるサービス「外テレ(ソトテレ)」を開始しました。

 これまでは、外の看板をデジタル化したもの、つまりデジタルサイネージをアドネットワーク化しましょうということをやっていました。それはそれで良いのですが、電子看板みたいなものなので、もう一段階先に進みたいと思い、コンテンツをちゃんと外に届けられるサービスとして外テレを開始しました。ゴルフ場などの施設や店舗のオーナーが、お客が興味のありそうなコンテンツを自社で用意したり購入したりして、設置したデジタルサイネージに配信できるものです。

 時間の短いコンテンツが主体になると思いますが、動画配信サービスのアウトドア版みたいなものです。クラウド型なのでインターネットを介していろいろなコンテンツを選べるし、それを簡単にウェブブラウザで設定できる。これまでのデジタルサイネージは、1カ月くらい前にはコンテンツを提供しないといけなかったので、その時点で分かっていた情報しか流せないという課題がありました。クラウドならリアルタイムに更新できるので、そのあたりをすべて解決できます。

ゴルフダイジェスト・オンラインは、関東を中心としたゴルフ施設50箇所にディスプレイを設置。ゴルファーにセグメント化された情報を発信している
ゴルフダイジェスト・オンラインは、関東を中心としたゴルフ施設50箇所にディスプレイを設置。ゴルファーにセグメント化された情報を発信している

 やはりブラウジングじゃないと、インターネット的なダイナミックな広告配信ができないんです。海外ではそれが主流で、日本はすごく遅れをとっているので、そこが解消されるとインターネットで培ってきたノウハウが反映できます。リアルタイムに情報が変わってそれが広告と連動したり、近くのお店の空き枠状況でクーポンを入れたりといったこともできるでしょう。これまで企画はあったけれどプラットフォームが整っていなかったからできなかったことが、どんどん可能になっていきます。

 データまわりに関しては、メディア開発というか、新しい消費者との接点をちゃんと作っていきたいと思っています。これまでは、広告配信につなげるためのターゲティングデータを進化させようみたいな考えの人が多かったと思うのですが、恐らくそれだと駄目なんです。やはり「過去にこの人はこうだったよね」だけではなく「これから買う可能性がある人」を見つけていきたいので、広告だけでなく商品開発とかセキュリティとか、日本ではまだどこもできていないサービスを提供したいと思っています。データを突きつめていくと、広告というのは分かりやすい分野なんですが、それ以外の面でも活用ができるし、そこは完全な新市場だと思っています。

--9月には最新のテクノロジに焦点をあてた新メディア「Catalyst」を立ちあげ、その一環として日本国内でドローンレースなどを開催しました。なぜ、ドローンに注目したのでしょう。

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