シリア難民の大量受け入れを表明したドイツでは、有志による難民向けの無料オンライン大学も立ち上がっている。難民といっても、対象はドイツにたどり着いたシリア難民だけではない。出身地にかかわらず、世界のどこからでもオンラインで受講できるのだ。
語学やスキルの習得は新たな土地での就職に役に立ち、受入国としても、できるだけ早く就職して自活してもらう方が助かる。とくにドイツでは専門労働力が不足している。
難民には、母国で大学に通っていたが、内乱で中断せざるを得なかったり、大学に入学するはずが、国を追われてできなかった若者などもいる。しかし、多くの受入国では居住許可なしでは公立の大学には入学できず、入学には高校卒業証明書なども必要とされる。難民にとっては、そうした証明書の入手も容易ではない。
2015年、ベルリンで創立されたKiron大学では、そうした障壁を取り除き、難民認定を受けていたり、亡命申請の手続きを開始したりしていれば、誰でも入学できる。
同校は、最初の2年、オンラインで受講した後、最後の1年(ヨーロッパの学部は主に3年制)は提携大学のキャンパスに通うという仕組みだ。ドイツ国内の大学だけでなく、中近東やアフリカ、米国、カナダの大学とも提携しており、学生は3年目も受講のためにドイツまで行く必要はない。2016年にはベルリンに独自のキャンパスも開校する予定である。
Kironが提供する講座は、ヨーロッパ単位互換制度の認定を受けており、学士は提携大学から授与される。2017年末までに、Kironとして大学認定を受けられるよう尽力中だ。講義にはMOOC(大規模公開オンライン講座)が利用されており、ハーバードやスタンフォードなど有名校のオンライン講座を最新のEラーニング技術で加工して提供している。
オンライン講座はすべて英語で行われるが、3年目をドイツの大学で受講する場合、講義はドイツ語で行われるため、ドイツ語の習得が必要とされる。
今のところ学部は、商業、エンジニアリング、建築、コンピューター科学、異文化研究だが、英語とドイツ語の語学講座、心理カウンセリングやライフコーチングなども用意されている。
Kiron大学を創立したのは2人の現役大学院生だ。トルコでシリア難民らと接したことがきっかけで難民向け大学を思いついたのは、難民危機が起こる前、2014年のことだった。立ち上げのために他の有志にも呼びかけ、オンライン講座提供業者や大学などに話を持ちかけた。ウェブサイトの開発を含み、大学運営はボランティアによって行われている。
運営には学生1人あたり年400ユーロ必要だが、資金はドイツ国内の財団からの寄付以外に、2015年9月から11月にかけてドイツのクラウドファンディングサイトで寄付を呼びかけた。目標額の120万ユーロには及ばなかったものの、54万ユーロ近く集まり、400人以上の学生に奨学金を授与できたという。
現在も寄付を募っており、1年分の費用400ユーロを提供して個々の学生の支援者となったり、奨学金として3年分の1200ユーロを寄付すれば、その学生と直接連絡を取り合ったりすることも可能だ。またベルリン、イスタンブール、ロンドンではボランティアやインターンも募っている。将来は、有給スタッフを雇えるだけの収益を上げることを目指している。
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