「リターゲティング広告」と聞くと、サイトに訪れたユーザーに対して広告を出し、再訪を促すための仕組みというイメージが先行します。しかし実際は、いわゆる「リターゲティング」という用語から連想される効果以外の側面が多くあります。
第3回でも触れましたが、ダイナミックリターゲティングは多くの人を集客するための「広告」ではなく、見込顧客に購入を促す「販売促進」のひとつとして捉えた方が実態に即しています。そのため、単純にサイトに消費者を呼び戻すこと以外の要素がダイナミックリターゲティングには含まれています。
Criteoの調査によれば、オンラインでは98%のサイト訪問者が購入に至らずに離脱しています。また、購入に至る2%の消費者のうち、40%近くは購入までに1週間以上検討し、サイトに複数回訪問しています。サイトに訪問した当日に購入する消費者は2%のうち半数弱ですので、購入意欲が非常に高い消費者と、購入までの後押しが必要な消費者は半々であるといえます。
実店舗の場合、来店した見込顧客に対して販売員がおすすめの商品、よく売れている商品を紹介したり、他店と比較検討して迷っている人への最後のひと押しをしたりできます。しかし、販売員が存在しないオンラインではどうでしょう。オフライン・オンラインを問わずさまざまな施策により集めてきた見込顧客に対し、現状では物理的に接客をすることが困難です。
一方、ダイナミックリターゲティングでは、売り上げに直接結びつく「販売促進」が可能です。そのため、おすすめの商品の紹介、検討中の消費者に対する最後のひと押し、他店と迷っている消費者のつなぎとめなど、実店舗での接客に近いサービスをオンラインで提供できるようになりました。
そのダイナミックリターゲティングが持つ販売促進の側面を、具体例をもとにご紹介します。
Criteoも現在ではダイナミックリターゲティングのサービスを提供する企業として認知されていますが、創業当初はサイト内でおすすめの商品などを紹介するレコメンドエンジンを開発、提供していました。そのような背景からもご想像いただける通り、レコメンドとダイナミックリターゲティングは非常に近しい関係にあります。
ダイナミックリターゲティングのバナーでは、閲覧していた商品のほかに、エンジンが膨大な閲覧情報にもとづいて選んだおすすめの商品を合わせて表示することが多々あります。特定の商品を見ていたにも関わらず、バナーで異なる商品が表示されて購入に至る消費者など本当にいるのかと疑問に思われるかもしれません。しかし、EC、旅行、不動産など商品点数が膨大にあるサイトは、本当に欲しい商品を探すことが困難な場合があります。
そのような状況でも、ダイナミックリターゲティングのバナーは膨大な閲覧・購入データをもとに「特定の商品と合わせて閲覧されている商品」や「ほとんどの消費者が閲覧している商品」などを、消費者一人ひとりに合わせて、適切なタイミングでレコメンドすることが可能です。これにより、消費者がたどりつけなかった「本当に欲しい商品」を紹介し、購入してもらうことができます。
実際のデータをみると、不動産系のサイトでは、閲覧していないレコメンドされた商品を購入する割合は65%にも上ります。同様に、アパレルサイトでは63%、旅行系サイトでは55%となります。このような実績は、ダイナミックリターゲティングが、消費者の求めている商品に関連したものを購入してもらうクロスセリングの施策としても非常に有効であることを示しています。
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