新潮流「ダイナミックリターゲティング」

ダイナミックリターゲティング広告が持つ「リターゲティング」以外の可能性 - (page 2)

田坂 彬(Criteo)2015年10月05日 08時00分

消費者の検討期間を短縮するダイナミックリターゲティング

 ダイナミックリターゲティングにより消費者を呼び戻すことで、購入までの日数を短縮することが可能です。以下のグラフはCriteoバナーを表示した消費者と、表示していない消費者で、サイト離脱後に購入に至った消費者の割合を時系列で表示しています。ダイナミックリターゲティング広告が表示された消費者は、サイト離脱から1週間後でも、表示されていない消費者と比較して倍近い割合で購入に至っています。


[データ参照:Criteo Internal Data, Analysis scope]

 ダイナミックリターゲティングは、検討している消費者に対し、適切なタイミングで一人ひとりに合わせた「接客」をし、購入の後押しをすることで検討期間を短縮することが可能です。すなわち、購入までの期間を短縮することで、1人の消費者に対して投下するオンライン広告全般の金額を抑え、マーケティング施策全般の効率化を実現できる可能性があります。これは膨大なデータをもとに購入に至りやすい消費者の行動パターンを分析し、購入の後押しをするダイナミックリターゲティングならではの効果です。

競合対策としてのダイナミックリターゲティング

 膨大な商品数と訪問者数を有するEC、旅行、不動産などの業界をはじめ、競争の激しい業界では、1人の消費者を複数の企業で取り合うことが少なくありません。そのような競争関係にある2社で、1社はダイナミックリターゲティングを実施し、もう1社は実施しない場合、どのようなことが起こるかは想像に難くないでしょう。商品の購入を検討している消費者が、商品のレコメンドやリマインドを受けるのはダイナミックリターゲティングを実施している企業からのみになります。そのため、実施していない場合は検討している消費者の目に触れる機会はもちろんのこと、接客する機会も減ってしまい、競合に貴重な見込顧客を奪われてしまいます。

 では実際、停止することでどの程度のインパクトがあるのでしょうか。ダイナミックリターゲティングを停止した企業A社と、ダイナミックリターゲティングを継続したB社で重複している消費者の売上割合の変化を調査しました。結果は、停止一カ月後で「A社:B社」の売上割合が「1:1」から「2:3」へと変化し、2社を比較検討している顧客を停止したA社は競合B社に奪われてしまいました。

 この事例からわかるように、ダイナミックリターゲティングは単純に消費者を自社サイトに戻すだけでなく、競合と自社の間で揺れ動いている消費者をつなぎとめる役割も果たしています。

 比較検討している消費者の獲得には競争が発生しますが、果たしてどれだけ獲得すべき価値があるのか疑問に思われるかもしれません。しかし実際、複数のサイトを比較検討しているユーザーの方が1つのサイトしか見ていない場合と比較して、購入に至りやすいというデータがあります。

 ファッションEC業界におけるデータでは、バナーを経由してサイトに訪問した消費者が購入に至る割合は、1つのサイトしか閲覧していない場合と比較し、2つのサイトを閲覧している場合は12.4%増加します。さらに、3つの場合は31.3%増、5つの場合は92%増と、購入確率が閲覧しているサイト数に応じて大幅に上昇していきます。あらゆる業界で多くのプレイヤーが存在している日本では、どのような業界であっても、競合となるサイトへの優良顧客の流出対策が重要であることが読み取れます。

 ここまでご紹介した通り、ダイナミックリターゲティングは単純に消費者を呼び戻すだけでなく、クロスセリングの効果、検討期間の短縮、競合への顧客流出への対策などさまざまな効果があります。ダイナミックリターゲティングはビックデータを活用し、人間では到底できないような分析にもとづいているため、今後も技術の進化、活用する人の応用により、思いもよらない効果が見込めるかもしれません。

田坂 彬

Criteo

スペシャリスト アカウントストラテジー

2009年、ウェーバー・シャンドウィック入社。主に外資IT企業に対して、メディア向けイベントの企画と実施、プレスリリースの作成など、広報業務の企画立案から実施まで全般にわたり携わる。2014年より現職。

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