本連載の第1回では、ダイナミックリターゲティングに至るまでのインターネット広告の歴史全体を振り返り、第2回では、ダイナミックリターゲティングが「真のパーソナライズ」を実現させている仕組みについて説明しました。本稿では、そのふたつを踏まえた上で一旦大きく視点を変え、ウェブオペレーションの観点のみならず、ダイナミックリターゲティングをどう考えるべきかを中心課題とします。
「進化した広告」として捉えられることが多いダイナミックリターゲティング。しかし現時点では、これを「広告」と考えるべきではありません。
広告の本質は、文字の通り「広く告げる」こと。すなわち、一方的、かつ可能な限り「広く」告げるためのもので、カバーできる範囲は広ければ広いほど良いとされます。そして、そのKPIを一言にまとめるなら英語での語源が最も適切かも知れません。「advertisement」はラテン語「ad vertere」⇒「振り向く」に由来し、正しく「振り向かせる」ためのものです。
このように広告は、現在こちらに向いていない、不特定かつ可能な限り多数の人を対象とします。そして、ブランドに対する認識や購買欲がないユーザーをこちらに「振り向かせる」ために定性的なイメージを配信します。商品自体の魅力はもちろん、それを取り入れたライフスタイル要素や提供者(=ブランド)の魅力などを伝え、認識のないユーザーに購買欲を持たせ、ブランドエクイティを蓄積します。広告は、その商品を求めるべきであることを提案するものなのです。
こうした特徴は、ダイナミックリターゲティングの本質とはまるで逆行しています。
リターゲティングは、該当サイトを閲覧したことがあるユーザーのみを対象とするので、配信は「広く」行われるのではなく、むしろピンポイントです。また対象は、その閲覧行為により、すでに購買欲を示しているため、すでに「こちらに向いている」ユーザーばかりです。
さらに、ダイナミックリターゲティングは一方的な配信ではなく、ユーザーの行動データをインプットしています。閲覧の量や来訪回数、行動データが多ければ多いほど、バナーコンテンツとその配信のタイミングが最適化され、より高い確率でユーザーを購入取引へ導きます。
すなわち、その商品を求めるべきであることを提案するものではなく、商品をすでに求めているユーザーを対象に、より効率よく収益化するものがダイナミックリターゲティングなのです。
その桁違いの効果は、言うまでもなく大量の行動データに基づく最適化にあります。同時に、継続的に安定した効果が実現できる最大の理由は、定量データ以外の要素、すなわち広告のコアとなる定性的な要素を、ほぼ全て排除していることにあります。
右の広告は商品単位で、すでに購買欲を示している特定のユーザーに対し、商品を推奨するもので、見た目でも、根本的に印象が異なります。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果