インターネットの普及とデジタルデータ化によって、画像の入手はアナログ時代に比べ、容易にそしてスピーディになった。しかし手軽に入手できるようになったからといって、著作権や肖像権などの権利問題がなくなったわけではない。むしろインターネットによる“拡散力”を考えると、より注意が必要だ。
一方で、著作権や肖像権をクリアしている画像を使えば、クリエイティブの幅は大きく広がる。プレゼン資料の作成やSNSの投稿など、アイキャッチとしての画像の重要性が高まる中、ビジネスパーソンとして知っておきたい画像の著作権、肖像権の基礎知識について、フォトエージェンシー「ゲッティ イメージズ」を運営するゲッティ イメージズ ジャパンのエージェンシー営業部部長の持家学氏、プロダクトスペシャリストの大串京子氏、弁理士/知的財産アナリストの永沼よう子氏に聞いた。
ゲッティイメージズは世界100カ国以上にデジタルコンテンツを提供するフォトエージェンシー。広告販促用のイメージフォトから、ニュース、報道写真、動画コンテンツ、音楽コンテンツまでを幅広く取り扱う。
クライアントと直に接する持家氏には、日々著作権に関する多くの質問が持ち込まれる。「被写体の許可が取れているのかという質問が最も多い」と持家氏は話す。ゲッティ イメージズでは各権利がクリアになっているコンテンツを取り扱っているが、著作権と肖像権は異なる権利のため、それぞれの許可が取れているのかはチェックが必要だ。
この2つは、いわば両輪の関係でどちらがかけていても商用利用することは不可。たとえ、写真の著作権者がOKと言っている場合でも、被写体として人物が写っていた場合、被写体となる人物が承諾しなければ、肖像権等の侵害となる。それが未成年であった場合は、保護者の許諾が必要となる場合もある。
「意図せず人が写りこんでいるような場合であっても、写真の利用方法などによっては、その人の許可も必要となる可能性もあるので、注意が必要である」(永沼氏)とのこと。
さらに「誰かが撮影した写真をCG化、イラスト化しても同様。著作権者や人物が写っているのであれば肖像権の両方をクリアにしなければ加工しても使用することは許されない。これはとてもベーシックなところ」(永沼氏)と言う。
それならば、新たに撮影すればすべてがクリアになるのではないか、と思うかもしれないが、それは違う。
持家氏は「例えば有名な写真があって、その写真を使用して何かを作りたい。そこで、よく似せた写真を撮り直したとしても、著作権侵害になる可能性がある」と話す。写真そのものを使っていないのに、なぜ著作権侵害にあたるのか。その理由は被写体の選択、組合せ、配置等にも著作物としての創作性が認められるからだ。
「別途撮影した写真について、被写体の選択、組合せ、配置等が類似するとして、著作権侵害になる判決が出たことがある。『スイカ写真事件』もしくは『みずみずしいスイカ写真事件』(東京高等裁判所2001年6月12日)と呼ばれるものだが、背景やスライスされたスイカの配置などが酷似しており、そのような素材の選択、組合せ、配置が共通していることから著作権を侵害しているという判決が出た」と持家氏はいう。
このような素材の選択、組合せ、配置等に著作物としての創作性が認められることからすれば、「誰かが撮影した写真をCG化、イラスト化しても同様。写真を元にしてイラストを作成する場合には、その写真の著作権者の許可が必要となる」ということになる(この場合、加工後も、被写体である人物が誰であるか特定できるようなら、肖像権についても配慮する必要がある)」(永沼氏)と言う。
このように著作権が及ぶ範囲は想像以上に広い。しかし永沼氏は「アイデア自体は保護の対象にはならない」という。「よく言われる例え話で、未来からネコ型ロボットがやってくる、と話すと誰でも『ドラえもん』を思い浮かべるが、実はここまではアイデアなので自由に使用することが可能」。大串氏も「ネコ型ロボットまでだったら、著作権の保護対象にならない。ただし、そのネコ型ロボットが青くて、フォルムが似ていたりする場合は、「表現」を模倣していることになり、著作権侵害と判断される可能性がある」と続ける。
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