現在Saddleback Leatherでは革製のタフなスーツケース、ダッフルバッグ、バックパック、ブリーフケースなどのカバン類のほか、革製の財布やベルト、タブレットケース、下敷きなどのアクセサリや、犬の首輪などのペット用品を販売している。
同サイトの最大の特徴は、これらの製品に「100年」という途方もない保証期間を設けていることだろう。腐食や変色、動物に噛まれた、水に浸かった、化学物質にさらされた場合などは無効だが、責任ある使用中の製品の欠陥と認められた場合には修理や交換に応じるという。
バッグ類はそれぞれ2~3種類のサイズを用意。ユーティリティ・ダッフルバッグであれば548~598ドル(約6万8000~7万4000円)、レザーサッチェルが308~408ドル(約3万8000~5万円)、レザースーツケースが1125~1175ドル(約14万~14万6000円)といった価格帯だ。
革製であることもあり概して重めで、スーツケースの場合、Sサイズでも15ポンド(約6.8kg)、Lサイズでは18ポンド(約8.2kg)ある。価格帯は皮革をはじめとした材質の確かさ、職人芸による品質の高さ、100年保証などを考えればまずまず安いところだろう。
Saddleback Leatherはこれらの製品の品質や職人芸を紹介するために、制作工程を動画「How to Knock Off a Bag」などで取り上げている。単純に過程を示すのではなく、「どうしたらSaddleback Leatherのカバンを模倣できるのか」との設定で紹介をしており、これがユーザーたちを引きつけている。
動画のタイトルにある「Knock Off」には、英語で「模倣する、ブランド品などのフェイク商品を作る」といった意味があるそうだ。つまり、この「How to Knock Off a Bag」とは、日本語で「どうやってカバンを模倣するのか」といった意味になる。
動画でマンソン氏はまず「今日はあなたにとってラッキーな日だ。Saddleback Leatherのカバンを模倣する方法を知ってお金を稼げるようになるのだから」と切り出し、カバンの材料にどの革や糸を使えばよいのかなど、カバンの模倣の仕方を面白おかしく説明していく。たとえば以下のような具合だ。
「Saddleback Leatherが金具に使っているステンレスはすごく高価で高品質なんだ。君が使うことはないだろうけど......そんな君はステンレスの代わりにニッケルを使うことができるよ。まるでプラスチックみたいなね」
このように自社商品のストーリーを一方的に紹介するのではなく、「偽造する=安く済ませる」という設定を用意することで、知識がなければ判別しづらいカバンの材料、質の違いについて消費者を教育するとともに、自社商品のカバンの質の高さを自然に伝えることに成功しているのだ。
自社商品のストーリーを語ることの重要性はある程度認識されてきていて、実践するECサイトも増えてきている。しかしその努力とは裏腹に、顧客の興味を引くことにつながらないで苦労しているサイト運営者も多いはずだ。
そんな運営者たちにとって、ストーリーの語り方が一方的でない、ユーモアあふれるプロモーション動画はサイトの伝えたい点を楽しみながら学べる一例として、大いに参考にできるだろう。
一度問い直してみるべきは、そのストーリーを語る方法にも顧客視点がしっかりあるかどうかということだ。顧客視点を持ち続けるのは簡単なようで難しい。意識して心がけることで、自社サイトで作るコンテンツにも違いが出てくるだろう。
尼口 友厚
ネットコンシェルジェ
CEO
明治大学経営学部卒。米国留学からの帰国後、デザイナー/エンジニアとしての活動を経て、2002年に国内有数のウェブコンサ ルティング会社「キノトロープ」に入社。 2003年、同社関連会社としてネットコンシェルジェを設立。eコマースとブランディングを専門領域とし、100億規模の巨大ECサイトからスタートアッ プまで150を超えるクライアントを抱える。
2015年にベンチャーキャピタル2社より資金を調達し、キュレーションコマースプラットフォーム「#Cart」を開始。趣味はブラックミュージック鑑賞。著書に「なぜあなたのECサイトは価格で勝負するのか?」(日経BP)。
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