BattleBoxは2008年、英国で設立。創業者のハント氏は、英国のサクレッドハート大学を1984年に卒業した後に数年間ロンドンの広告会社に勤務。結婚後、英国ヨークシャーに移り住んで2人の娘、1人の息子の子育てに専念し、友達が経営する結婚式を手伝う会社で週末のみパートタイムで働いていた。
息子が6歳になった頃、ハント氏は彼を取り囲むおもちゃには電子機器系のおもちゃやゲームしかないことに気づき、考え込むようになった。自分たちが住んでいるのはヨークシャーという自然豊かな土地だ。ならば、室内だけでなくアウトドアで楽しく遊べるようなおもちゃがあればいいのにと思ったのだ。
ハント氏も子供の頃は、夏休みには暇を見つけては森の中に出かけて活発に遊んでいた思い出があった。しかし、自分はアウトドアが好きでも、子供を無理やり連れて行ったら意味がない。子供が自らアウトドアに向かいたくなるようにしなければならないと思った。
そこで、子供が森の中で、木に紛れて友達を待ち伏せしてみたり、キャンプをしてみたり、コンパスを読んだり、楽しく遊ぶことができ、かつ人生を生きる上でも役立つ「学び」を与えられるサバイバルキットが良いのではと思い、キットを自ら作ることを構想する。
ハント氏はこのキットを販売するためにBattleBoxを立ち上げようと考えた。しかし、広告やマーケティングにかけられるお金はほとんどなく、知名度ゼロの状態から始める必要があった。
そこで、工場に500ポンド(約9万3000円)分の製品を注文してミリタリーキットを作り、テストマーケティングを兼ねて、子供の学校で開かれたフェスティバルにブースを設置してそれを売ることにした。そのブースには子供やその保護者が続々と集まり、ミリタリーキットは完売。ビジネスへの手応えを感じることができたという。
このフェスティバルで得たお金でミリタリーキットを増産し、また子供が多く集まるフェスティバルに顔を出す、というように英国内のフェスティバルにブースを出店しつづけた。当初は、こうした地道な活動によって認知度をあげ、そこで得たお金をECサイトの運営に充てた。その結果、英国内だけの問い合わせにとどまらず南アフリカやオーストラリアからオーダーが入るまでになったという。
BattleBoxは子供向けのサバイバルキットという商品のユニークさもあるが、起業当初の顧客の開拓についても参考にできるところが多い。
英国内のフェスティバルにブースを出店、対面で顧客を開拓――。こうした方法であれば、商品に対する認知度を高めることもできるし、フェスティバルに来ている人や、新聞などのメディアに商品を話題に取り上げてもらえる可能性もある。これらはネット上での自社ブランドへの認知度を高めることにもつながるだろう。
ECサイトを運営していると、どうしてもネット上でのマーケティングに偏ってしまいがちだが、このBattleBoxのように実店舗を出すまではいかずとも、予算が大きくかからないフェスティバルでのブース出店など、オフラインの活動も顧客開拓の手段のひとつとして考えてみるのも手だろう。
国内では最近、「カラーミーショップ」や「BASE」などのECシステム会社が、EC事業者のオフライン活動を支援するために積極的にイベントを主催している。利用中のシステムがこういったイベントを企画しているようであれば、参加してみてはいかがだろうか。BattleBoxのように成長のきっかけを得られるかもしれない。
尼口 友厚
ネットコンシェルジェ
CEO
明治大学経営学部卒。米国留学からの帰国後、デザイナー/エンジニアとしての活動を経て、2002年に国内有数のウェブコンサ ルティング会社「キノトロープ」に入社。 2003年、同社関連会社としてネットコンシェルジェを設立。eコマースとブランディングを専門領域とし、100億規模の巨大ECサイトからスタートアッ プまで150を超えるクライアントを抱える。
2015年にベンチャーキャピタル2社より資金を調達し、キュレーションコマースプラットフォーム「#Cart」を開始。趣味はブラックミュージック鑑賞。著書に「なぜあなたのECサイトは価格で勝負するのか?」(日経BP)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?