Dolls Killは衣服を販売するとともに、FacebookとInstagramなどのソーシャルメディアを積極的に活用して顧客の認知度を上げていったという。ファラッヒー氏らが当初考えたのは、ソーシャルメディアでモデル起用を前提としたキャンペーンを実施すること。「ファンの獲得」と「モデルの確保」の両取りを狙ったのだ。
こうして始められた「Be a Doll」は現在も継続的に行われている。といっても、参加希望者は特別な手続きをする必要はなく、InstagramでDolls Killのアカウントをフォローして自分がDolls Killを着ている写真をアップロードし、それに「#dollskill」のタグを付けるだけでよい。
毎週金曜日にはこの中からファイナリストが発表され、100ドルの商品券がプレゼントされる。またモデルとして起用する場合は、撮影をするサンフランシスコへの旅費も支払った上、空のスーツケースに欲しい商品を好きなだけ入れてよい権利が与えられるという。
実際、同サイトでは全体の25%しかプロのモデルを起用していない。残りの75%は、会社が募集した写真コンテストを勝ち抜いて仕事を獲得したDolls killのファンだそうだ。同サイトのモデル「Doll」の役割を果たした女性たちは、サイトの熱狂的なファンでありつづけると同時に、新しいファンを開拓するブランドにもなる。
ソーシャルメディアにて自サイトのファンからモデル候補を見つける、という手法をとったことに関して、ファラッヒー氏は正直に、プロモデルに高額な料金を払いたくなかったことを挙げている。ただしサイトのファンがモデルを務めることは、サイトのカラーやブランドを構築する上でもプラスになっているとも考えているようだ。
「一般的な女性で、しかしDolls Killの服のようなエッジの効いた服を好きな女性がDolls Killの服を着る方がよりDolls Killをあらわしてくれるいいモデルだと考えているんだ」(ファラッヒー氏)。
顧客に自分たちの商品の写真を着てもらうキャンペーンを開いて毎週ファイナリストを決め、時には顧客をモデルに起用するという手法は、これまでの顧客層とのつながりをより強める点でも、新しい顧客層を開拓する上でも有効なアプローチだろう。
ECサイトの顧客をブランドづくりに巻き込む。リン氏の商品発掘のセンスも非常に面白いが、顧客が自発的に商品を宣伝してくれるシステムをつくりあげたという点でも注目に値するサイトだ。
尼口 友厚
ネットコンシェルジェ
CEO
明治大学経営学部卒。米国留学からの帰国後、デザイナー/エンジニアとしての活動を経て、2002年に国内有数のウェブコンサ ルティング会社「キノトロープ」に入社。 2003年、同社関連会社としてネットコンシェルジェを設立。eコマースとブランディングを専門領域とし、100億規模の巨大ECサイトからスタートアッ プまで150を超えるクライアントを抱える。
2015年にベンチャーキャピタル2社より資金を調達し、キュレーションコマースプラットフォーム「#Cart」を開始。趣味はブラックミュージック鑑賞。著書に「なぜあなたのECサイトは価格で勝負するのか?」(日経BP)。
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