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「EC売上アップ」のコツ

世界一の時計ブログ「Hodinkee」に学ぶメディアコマース

尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)2015年07月21日 08時00分
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 人気を得たブロガーが、自分のファンに向けてECサイトで販売を手掛ける、というのはよくある話だ。また逆に、より多くの顧客を引き付けたいECサイトが、自分たちのストーリーやあるジャンルの製品のレビュー、ノウハウを伝えるブログを発信することもあるだろう。

 今回紹介する「Hodinkee」は、ブログで人気を得た後、オンライン販売を手掛けるようになったサイトのひとつだ。同ブログは、高品質な腕時計に関する詳細なレビューやコラム、レポートを発信するオンライン腕時計マガジンとして世界200カ国からの読者を獲得しており、日間5000人、月間75万人のサイト訪問者を誇っている。


「Hodinkee」トップページ

 セレブリティからの信頼も厚い。ラッパーで音楽プロデューサーのジェイ・Zが、カーネギーホールで開くコンサートで着用する腕時計のコンサルティングをHodinkeeに依頼したり、NBAロサンゼルスクリッパーズのJ・J・レディック選手が同サイトのビデオ対談にゲスト参加したりしているのだ。

 腕時計を専門につづった内容で、盛りだくさんのブログから派生したECショップとは、一体どのようなものなのだろうか? 詳しく見てみよう。

腕時計、ブログ好き、退屈な仕事が人気ブログを生み出した

 Hodinkeeの創業者はベンジャミン・クライマー氏。同氏の父親は写真家で、6~7歳頃からメカニックなアイテムが大好きな少年だった。10代のころにはハイキングや登山にはまり、1週間かけてロッキー山脈やアディロンダック山地に出掛けることもあったが、その時も一番大事にしていたのは、コンパスとアナログ時計だったそうだ。


Hodinkeeの創業者であるベンジャミン・クライマー氏(出典:Hodinkee)

 クライマー氏はアートとデザイン、工学技術、機能性などが1つになったものとして、特に時計を好んでいる。16歳の時に祖父からOMEGAのスピードマスターをもらってからは、クロノメーターのとりこになったという。

 そんなクライマー氏は大学ではビジネスとコンピュータサイエンスを勉強。卒業後はUBSコンサルティングファームやスイスバンクに就職したが、正直なところ、仕事は退屈だと感じていたという。さらに2008年にリーマンショックが起きて金融が壁にぶちあたると、暇を持て余す時間が多くなった。

 このとき上司は、毎日出社する必要はあるが、その時にするべき仕事がまったくないのであれば、好きなことをやって構わないと言ってくれた。クライマー氏の好きなものといえば、腕時計であり、自分で文章を書いて表現することであり、ウェブサイトだった。こうして退屈しのぎに生まれたのが、腕時計に関する詳細なレビューや批評、レポートなどを掲載するオンライン腕時計マガジン(前述のブログ)だったという。


「Hodinkee」のブログ

 このブログでは、時計に関する最新情報を伝えることもあれば、ヴィンテージな品物にもスポットを当てて歴史的な背景などを説明することもある。コラムやインタビュー、論説などの読み物は熱心な時計愛好家に好まれており、利用者の9割は男性で、平均して11個ほどの時計を所持している層なのだそうだ。

 ブログはビジネス的な意図を持たずに始めたそうだが、「なるべく良いものを」と考えたクライマー氏は、コレクターにインタビューをしたり、オークションや競売カタログをよく見て勉強を積んでいった。それまでオンラインには腕時計に関する本格的なメディアはほとんどなかったこともあって、次第に注目が集まり、GQやThe New York Times、Forbesなどの有名な雑誌や新聞でも紹介された。

 特にGQでレポート記事が取り上げられた時には、ブログの訪問者が1000人、2000人と増加。勢いが乗ってきた2009年5月には、コンサルティングのマネージャーを辞め、Hodinkeeをフルタイムの事業として本格的に始めることになった。

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