インフルエンサー活用「中国越境EC」支援--キングソフト翁代表の「新たな挑戦」

井指啓吾 (編集部)2015年07月07日 18時05分

 キングソフト代表取締役の翁永飆氏と、美容家でありMNC New York代表の山本未奈子氏が2014年12月に共同設立したInagora(インアゴーラ)は7月7日、SNS機能のあるショッピングアプリ「WONDERFULL」と、それに連携したモール型越境ECプラットフォーム「WONDERFULL Platform」を発表した。

  • キングソフト代表取締役で、Inagora代表取締役も務める翁永飆氏

 WONDERFULLは同日から、WONDERFULL Platformは7月20日から、いずれも日本と中国で提供する。中国の大手マーケティング会社Blue Focus傘下のBlue Focus ECと業務提携し、日本企業に対して、拡大する中国EC市場への進出(越境EC)を支援する。

 WONDERFULLは写真投稿SNSとショッピングを掛け合わせたサービス。WONDERFULL Platformは、その裏側で、越境EC向けの物流や決済、翻訳、マーケティング、カスタマーサポートまでをまとめて提供する事業者向けのサービスだ。


「WONDERFULL」の仕組み

 WONDERFULLの仕組みは、出店企業である「サプライヤー」、サプライヤーの商品を紹介して販売する「オーナー」、写真を閲覧して商品を購入する「ユーザー」から成り立つ。なお、ユーザーも商品販売に紐付かない状態であれば写真を投稿することが可能だ。

  • 「WONDERFULL」の商品販売写真のイメージ

 サプライヤーは専用管理サイトから、販売したい商品の詳細や価格、在庫数などを登録する。オーナーは、事前に契約を結んだ出店企業の商品を、商品の利用シーン(自ら着用しているなど)の写真を投稿することで販売できる。ユーザーは写真をタップすることで、アプリ内で商品を購入できる。販売が成立した場合、サプライヤーはInagoraに手数料として売り上げの10%、オーナーにマージンとしていくらか(未定)を支払う。なお、商品の販売責任はサプライヤーにある。

 日本では当初、美容やファッション、食、インテリアなどの領域で人気の100人のインフルエンサーだけがオーナーの権限を持っているが、将来的には全ユーザーがオーナーになれるようにする予定。Inagora代表取締役の翁永飆氏は、「2015年内にダウンロード数100万件、中国ではそれ以上を目指したい」と目標を語る。

 WONDERFULL Platformで提供するサービスとして、中国のユーザーに商品を届けるために独自の物流システムを構築した。商品の種類や特徴にあわせ、最適な税関/発送ルートをカスタマイズできるという。中国のユーザーはAlipayやWechat Payなどで商品を購入可能で、決済代金はInagoraが日本円に両替えをしてサプライヤーに支払う仕組みだ。

 中国でのプロモーションやブランディング、SNSマーケティングなどはBlue Focus ECが主に担う。日本のインフルエンサーが発信した情報を、中国のインフルエンサーを活用して拡散させるという。また、専門スタッフが日本語と中国語の翻訳をしたり、中国現地のスタッフが中国ユーザーからの問い合わせに対応したりし、日本のスタッフと連携してサプライヤーにフィードバックするサービスなども用意した。

  • オーナー100人の一部

  • 独自の物流システム

  • 中国での情報拡散イメージ

 WONDERFULL Platformの初期費用や固定費用は無料。商品が売れた場合に、システム利用料として売り上げの10%をInagoraに支払う。要するに、中国向けに商品を出品して売れた場合には、国内で販売した際の手数料10%とオーナーへのマージンに、中国向けシステムの利用料10%が加わる形ということだ。

 今後、香港や台湾、韓国、東南アジアなどにもサービスを展開していく計画だという。

 Inagoraは、あくまでもキングソフトとMNC New Yorkの“両代表”が設立した企業であり、両社の資本は入っていない。翁氏は「これは私の新しいチャレンジ。従来、国をまたがって商品を売るには、商社や物流会社、卸、流通、広告会社など多くの企業を通す必要がある。我々がそれを変えていく」と意気込みを語った。

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