「我々が目指しているのは、企業のマーケティング活動自体を“改善”することで成長を後押しすること。ABテストは、あくまでもその手段の1つ」――そう語るのは、Kaizen PlatformのCEOである須藤憲司氏だ。
同氏が2013年に米国で立ち上げた、ウェブサイトの改善サービス「Kaizen Platform(カイゼン プラットフォーム)」は、わずか2年でJALや小林製薬、アサヒ飲料、ヤフーなど100社を超える大手企業に導入されるまでに成長した。また2015年4月には、創業以来初めてとなる大規模アップデートも実施した。
「国内では競合サービスはない」と言い切る須藤氏と、プロダクト責任者である同社CPOの瀧野諭吾氏に、Kaizen Platformが急成長した要因や、同社ならではの強み、今後のビジョンを聞いた。
ウェブでビジネスを展開する上で重要なこと、それは企業やサービスのウェブサイトを訪れたユーザーのうち、実際に購入・申し込んだ人の割合(コンバージョンレート:CVR)を改善させることだ。それによって、サービスや商品への申込み数や広告表示数が増え、一定のコンバージョンを達成するための広告費の削減などにつなげられる。
しかし、多くの企業はウェブサイトを“作りっぱなし”にしていると瀧野氏は指摘する。「実店舗では商品を入れ替えるのに、ウェブサイトは平気で3年間放置していることもある。これはテクニック的な話ではなく、おもてなしの気持ちがあるかどうか。企業は新規事業にフォーカスしがちだが、まずは売上げの柱である既存サービスを改善すべき」(瀧野氏)。
Kaizen Platformは、このCVRの改善を目的に、ウェブサイトのABテストができるソフトウェア(「旧「PlanBCD」)を提供している。企業が改善したいページに一行のJavaScriptを埋め込むだけで、データ収集や効果測定、レポート出力など、テストに必要な機能をまとめて導入できることが特長だ。
企業はサービスを導入後、改善案を作成してABテストを実施する。たとえば、ECサイトでカートのフォームの色を「赤」から「緑」に変更する、商品詳細ページで「購入する」ボタンの言葉を「購入手続きへ」にするといった細かい変更だけで、アクセスやコンバージョンが大幅に上がることがあるという。Kaizen Platformでは、こうした効果を自動でテストし、最も効果の高い案を独自アルゴリズムで判別して提示してくれる。
しかし、そもそも企業担当者にとっては、その「改善案」を出すこと自体が難しい。長年、同じ企業に務めることで、自社のウェブサイトに問題があってもその状況に麻痺してしまい、自社の“本当の課題”が何なのかが分からなくなる担当者は少なくないと瀧野氏は指摘する。
そこで、Kaizen Platformでは自社で作成しなくても、クラウドソーシングを使って社外のデザイナーなどの“グロースハッカー”から、希望に沿った改善案を集められる機能を提供している。価格はページ単位で依頼できる「オープンオファー」が月額30万円から、自社の事業領域に合わせた実績・スキルを持つグロースハッカーのチームを作り、複数ページの改善を一度に依頼できる「特化型グロースハッカーチーム」が月額80万円からとなる。
グロースハッカーの条件として、職歴や居住地、国籍などは問われない。サービスに登録したデザイナーは、各社のオファーの中から改善したい企業ページを選び、専用のエディターでデザインを作成して投稿する。デザイン案の改善成果によってインプレッション数が変動し、その比率に応じて報酬が支払われる仕組みで、ABテスト採用時の投稿デザイン案あたりの月間報酬額は平均2~3万円だという。
現在、国内外に1400人のグロースハッカーが登録しており、週に2~3日、数時間働くだけで、Kaizen Platformでの年収が1000万円を超えるデザイナーもいるというから驚きだ。須藤氏は、同サービスについて、一部では“安かろう悪かろう”というイメージもある一般的なクラウドソーシングサービスとは一線を画すと話す。
「ハイスキルな専門家だけを集めて、高い報酬を返せる“プロフェッショナルネットワーク”を作っている。たとえば、売上げ数千億円の会社のCVRを10%改善できたら、数百億円の経済効果がある。クラウドソーシングは“コストダウン”という視点で見られがちだが、我々はその逆。すでにあるものをより改善することでさらにアップサイドできる」(須藤氏)。
Kaizen Platformは、2015年3月時点でヤフーやJAL、ネスレ、リクルート、楽天、マイクロソフトなど120社以上の大手企業を含む3000の企業に40カ国以上で利用されている。同社は売上げを公開していないが、導入企業のウェブサイト改善による経済効果は累計で100億円を超えるという(同社調べ)。
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