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企業と生活者が生み出す「共創コミュニケーション」の価値 - (page 2)

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共創コミュニケーションは、企業のごまかしが通用しない世界

――文字通り、「共に創る」ことを肝に銘じないといけないですね。

十字氏:重要なのは、“予定調和”になるような取り組みをしないことです。不特定多数の生活者が集まって声やコンテンツの投稿が生まれると、企業が想像できない反響が生まれるでしょう。そこで、企業がリスクヘッジのためにネガティブな声が集まらないようにテーマや投稿の条件を設定したりするのは適切ではありません。むしろ、想定外の化学反応や新たな気付きが生まれるのが、共創コミュニケーションの価値なのです。

吉川氏:企業が生活者に何を求めているのかということを匂わせてしまったらダメなのだと思います。例えば、「この商品をいっぱい褒めてほしい」というメッセージを投げても、生活者は興ざめしてしまいますよね。企業が自分たちに都合のいい情報だけを集めようとしては、共創コミュニケーションは成り立たないと思います。共創コミュニケーションは企業のごまかしが通用しない世界です。企業は、全てをさらけ出してあらゆる声や反響を受け止めるくらいの気持ちで、生活者に自由を与えなくてはいけません。そうやって、生活者が参加しやすい「雰囲気」を作ることも重要ではないでしょうか。


博報堂アイ・スタジオ ストラテジックプラナーの十字賢氏

――企業のマーケティング活動にとってのゴールはさらに先にあるのではないか。企業は何をKGIに設定すべきか。

十字氏:共創コミュニケーションが売上に直結する取り組みになるとはあまり考えにくいです。しかし、共創コミュニケーションによって生活者の声に触れることを通じて、商品やサービスのコミュニケーション戦略を見直す大きなきっかけになるのではないかと思います。

 中でも、企業の資産であるオウンドメディアの価値を最大化させるために、共創コミュニケーションによって生まれた成果を活用することは、大きな目的だということができます。企業が一方的に情報を発信していたオウンドメディアに生活者視点の情報を加え、今までにないユーザー体験を生み出す場所にすることができるのです。共創コミュニケーションはオウンドメディアを通じたエンゲージメントの最大化をもたらすと考えています。

――共創コミュニケーションには今後どのような可能性があるか。

十字氏:地方創生などには大きなチャンスがあるのではないかと思っています。例えば、地元の人が知っているおすすめスポットに関する知見を集めてコンテンツ化し、観光客に提供するような活用ですね。今回私たちの取り組みは電子書籍というアウトプットを提供しますが、共創コミュニケーションにデジタル、リアルといった垣根は存在しないと思います。「生活者の知見や創作を集めて有益な情報として再価値化する」ということが、一番大きな意義なのです。

 むしろ、共創コミュニケーションはリアルを意識せずに成立しないものだと言えるのではないかと思います。生活者の知見はリアルから生み出されるものであり、生み出されたアウトプットも生活者のリアルな生活を豊かで楽しいものにするためのものでなくてはなりません。その目的のために生まれるアウトプットは電子書籍である必要はなく、色々なものがあって然るべきでしょう。重要なのは、企業が生活者にとって有益なコンテンツを生み出し、生活者のライフスタイルの中に入っていくことなのです。


角川アスキー総合研究所 取締役の吉川栄治氏

吉川氏:私が共創コミュニケーションに期待したいのは、コンテンツが成長するということです。書籍は出来上がって店頭に並んだときが“完成”ですが、共創コミュニケーションによって生み出されたコンテンツは、出来上がったときが“スタート”になるのではないかと思うのです。また、生活者の中には創作意欲の高い人もたくさんいるはずです。そういった生活者のクリエイティブなアイデアをどんどん巻き込んで、面白いコンテンツが生まれれば楽しいですね。クリエイティブの創出に課題のある企業こそ、ユーザーと共創してみると面白いのではないでしょうか。

 加えて、“共創”と聞くと企業が生活者と同じ目線に立たなければならないと考えがちですが、必ずしもそうとは限らないと思います。企業は生活者に必要とされているものを提供するのではなく、生活者に新しい気づきを与えるような視点を持ち続けないといけません。共創コミュニケーションでは、いかに生活者が様々なアイデアやクリエイティブを想像してコンテンツを生むような“気が利くお題”を出すか、そして、どのように企業と生活者の関係性を長期的に構築するかという視点を持つべきです。

 一方で、企業は生活者との共創にどこまで覚悟を決められるかということが課題かもしれません。ユーザーの言動を企業の都合で評価するのは適切ではなく、場合によっては炎上することも含めて共創だと言えるくらい思い切った決断をしなければなりません。エンゲージメントを生み出すという目的のためには、企業は生活者から寄せられる厳しい意見にも目を向ける必要があるのです。

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