企業のInstagram活用方法をご紹介する本連載。第2回からは、グローバルブランドの活用事例をご紹介します。今回は、Mercedes Benz USAが新型コンパクトSUV「GLA」の発売時に実施したフォトコンテスト事例「GLA Packed Contest」(期間は2014年6月10日~同8月20日)です。
格式高いブランドイメージゆえに、新規顧客の獲得に課題を抱えていたMercedes Benz USAは、2010年以降、若者向けに安価な価格帯の車種をリリースしながら、ブランドイメージ刷新を図るリブランディング戦略に着手。ソーシャルメディアの活用だけでなく、ライフスタイル提案型ウェブマガジンや音楽イベントなども展開し、若者との接点を築くためのあらゆる施策を展開してきました。
そして2014年夏、新型コンパクトSUV「GLA」発売にあたっては、米国でマーケティング戦略上注目されているミレニアル世代(1980年代初頭~2000年代初頭生まれの米国の若者)をターゲットに設定。デジタルネイティブ世代であり、SNSでのシェア力に優れた彼らを活用すべく、Instagramキャンペーンが検討されました。
連載第1回で、Instagramの運用には「一貫性のあるブランドストーリー」が重要であるとご説明しました。Mercedes Benzが伝えようとしたのは、彼らが大切にする「ものづくり」の歴史です。
“1886年に初の自動車を発明して以来、Mercedes Benzはその革新を止めたことはない。安全性におけるイノベーション、走行パフォーマンス、そして高いデザイン性で常に業界をリードし、今日米高級車メーカーの中で高く支持されるブランドになった”
Mercedes Benzは、新型GLAを幅広い世代に支持されるブランドへと成長させるため、ミレニアル世代の若者に特別な体験を提供し、ブランド認知を高めることをゴールとしました。
自己表現欲求の強いミレニアル世代の参加を促すクリエイティブを検討する中で、Mercedes Benzは当時流行していたInstagram特有のハッシュタグ「#ThingsOrganizedNeatly」に注目します。
このハッシュタグで共有されているのは、小物や工具、キッチングッズからファッションアイテムまで、ユーザーがお気に入りのアイテムを平面に並べて撮影した写真です。若いInstagrammerは、このハッシュタグを付けた写真を投稿することで、自身の個性やクリエイティブセンスをアピールしているのです。
これをヒントに、Mercedes BenzはGLA車の荷物を置くスペースを、アイテムを並べるマットに見立て、自由に物を並べた写真を募集するアイデアを生み出しました。「What would you pack in your GLA?(あなたのGLAに何を積む?)」と問いかけ、週末のドライブを思い浮かべながら、自由にcargoをレイアウトした写真を「#GLApacked」で投稿することを呼び掛け。参加へのハードルを下げるため、キャンペーンサイトでは参加方法を簡単な3ステップで紹介しています。
キャンペーン認知を拡大させるため、フォトグラファーや俳優などのインフルエンサー、Mercedesアンバサダー部隊、そしてInstagramのアルファユーザーをパートナーに迎えました。彼らには、MercedesのブランドロゴとGLAの文字が入った専用cargoを提供。自由にアイテムを並べた写真をInstagram上で投稿してもらいました。
たとえば、女優のホーランド・ロデンさんは「週末にペットと海水浴に行く」というイメージで、ペット用品や水着などを並べた写真を投稿。この投稿は6万以上のいいね!を獲得し「#GLApacked」の認知拡大に貢献しました。
複数のソーシャルメディアアカウントを活用するミレニアル世代にリーチするため、Facebook広告も実施。Facebookでは、新型GLAの先進的で高級感あるデザインやスペックなど、機能性を訴求することに焦点を当て、ブランドサイトへ誘導。Instagramでは、ブランドストーリーの伝達に特化。2つのプラットフォームで一貫したメッセージを伝えていくことで、キャンペーン認知拡大とブランド体験の提供を加速させることを狙いました。
Instagram for Businessによると、GLA Packed Contestの結果、InstagramとFacebookからのブランドサイトへの送客が54%増加。また、「Facebook Direct Response Ads」の組み合わせによる成果指標として、サイトVisit増加率は580%という非常に高い数値を記録しています。つまり、2つのアカウント「運用」と「広告」施策の連動が、成果向上に大きく貢献していることがわかります。
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