企業のエンタメコンテンツに「AR(拡張現実)」本格活用の兆し

井指啓吾 (編集部)2014年12月25日 12時30分
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 スマートフォンやタブレット端末の普及とともに、企業が「AR(Augmented Reality:拡張現実)」技術を活用して消費者とコミュニケーションをとる機会が増えてきた。2014年には、ロート製薬が目薬「ロート デジアイ」で初音ミクとコラボレーションしたり、雪印メグミルクが雪印コーヒーの擬人化キャラクター「ゆきこたん」のライブパフォーマンスが見られる企画を展開したりしている。

 ARが企業のマーケティング担当者らに認識され始めたのは、スマートフォンアプリ「セカイカメラ」が登場した2008~2009年頃のように思う。そして2010年頃に最初の大きな波があり、多くの企業がARの活用を始めた。特にファッション分野は取り入れるのが早く、とあるブランドのショールームでARが活用されていたのが印象に残っている。

 そのほか目立つところでは2010年7月、コナミデジタルエンタテインメントがコミュニケーションゲーム「ラブプラス」のキャンペーンで、ゲームの中で登場する観光スポットなどにARマーカーを設置し、現実世界に出現する“カノジョ”と記念撮影を楽しめる企画を展開していた。

 ARはその後も、大きく騒がれることはないものの着実に活用され続け、今ではスマートデバイスでは当たり前の機能として定着しようとしている。

 WOMマーケティング協議会 事務局長の細川一成氏によれば、これまでARは「商品などの“説明”」に活用されるケースが多かった。たとえば、家具大手のイケアが展開するような、カタログにARマーカーを記載し、スマートフォンから専用アプリを通じて画像や動画を視聴できるようにするものや、観光地のパンフレットなどだ。


WOMマーケティング協議会 事務局長の細川一成氏

 しかし現在は、企業が消費者に向けて自ら情報を発信するコンテンツマーケティングが実践されている流れもあり、2010年頃よりもエンタメ系の企画でARが使われることが多くなっているという。

 直近では、日本郵便が初めてAR機能の付いた年賀はがきを発売した。ソニーデジタルネットワークアプリケーションズと連携して、日本郵便のキャラクター「ぽすくま」が年賀はがきの上で動き出す映像コンテンツを提供している。映像を視聴するには、無料の専用アプリ「ゆうびんAR」が必要だ。

 この企画の大きな特徴は、同一のARマーカーであっても、時期によって楽しめるコンテンツが変化すること。12月31日までは前述したぽすくまが登場するが、1月1日以降は「乃木坂46ぐるぐるAR年賀状」というコンテンツに変わり、乃木坂46メンバーの晴れ着姿や羊のコスプレ姿などを見られるようになる。

 “ぐるぐる”とあるように、年賀状を回転させたりスマートフォンを回り込ませたりすることで、メンバーがアクションを起こしたり、メッセージが表示されたりする。またコンテンツのBGMとして、2015年1月7日に発売される乃木坂46のファーストアルバムに収録される未発表曲をいち早く聴けるそうだ。


年賀はがき上に「ぽすくま」が出現

 「企業のコンテンツ発信は“流行り”で終わらない。コンテンツを作る上で、アナログとデジタルの垣根を越えるARは強力な武器で在り続けるはず」と細川氏は分析する。

 「少し前まで、アナログとデジタルのコミュニケーションは別物……ともすると対立するものという考え方があった。それはもう古い。ARに代表される新技術を使うことで、企業がこれまで続けてきたアナログでの情報発信をしながら、デジタルコンテンツを連動させていく形に変わっていくだろう」(細川氏)。

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