米CNET編集部注:本稿はRussell Horowitz氏が寄稿したものだ。記事の最後にHorowitz氏の経歴を掲載している。
Volkswagenが「Beetle」の2012年モデルの拡張現実(AR)キャンペーンを開始したとき、筆者はそのクールな要素に惹き付けられてしまった。それは認めなければならない。
画面上に広告文が光り、車内を撮影した魅力的な写真の数々が間隔を置いて表示される。
「思いも寄らない形でBeetleを発表するのは当然のことだった」
もっと詳しく聞かせてほしい!
「広告は自動車と同じくらい印象的なものでなければならない」
その通り!
そして、以下の指示が表示される。
「携帯電話かタブレットを手にとって、ARアプリをダウンロードしてほしい」
これはいったい、どういうことだ?
ご想像のとおり、筆者はこの指示を全く実行しなかった。Volkswagenの拡張現実アプリもダウンロードしていないし、Beetleの広告板まで車を走らせて、モバイルデバイスを広告板に向けて「ショーの幕を開ける」こともしていない(どのみち、これらの特別な広告板はカナダにしか設置されていなかったのだが)。Volkswagenの動画の中で、人々が携帯電話やタブレットに表示された拡張現実画像を見る場面があるが、筆者はその動画を見ることで我慢することにした。それは、他人を介して体験するスリルとさえ言えないものだった。
確かに拡張現実(口語では「AR」と略されることが多い)は、Beetleのキャンペーンが実施されてからの1年間で進歩した。アプリケーションは洗練され、モバイルデバイスのプロセッサはさらに強力になった。しかし、普及を妨げる障壁は今も残っている。
デジタル広告業界に15年以上携わっている筆者は、さまざまなトレンドが登場しては消えていくのを見てきた(誰か「PointCast」を覚えている人はいるだろうか)。
とはいえ、ARを広告に利用することで消費者のブランドとの関わり方が根本的に変わる可能性があると筆者は考えている。ARは、極めて的確に狙いを定めた完全没入型の体験を提供できる可能性を秘めている。これまでに見てきたどんなものとも異なる体験だ。こうした広告は、まだ誕生したばかりではあるが、刺激的で宇宙時代的な体験を顧客に提供できる。広告主がそれを収益化したいと考えるのは当然だ。
予測データを見てみよう。モバイルデータを専門とするJuniper Researchは、ARを採用した有料アプリダウンロード、サブスクリプション、広告が、2015年までに世界で15億ドルの売り上げを生み出すと予測している。広い視点で見ると、それは大した金額ではないように思えるかもしれない。だが、こう考えてみてほしい。今からほんの3年前の2010年、ARの全世界での売り上げは200万ドルにも満たなかった。
ARテクノロジを利用して、3Dデジタルグラフィックスを現実の物体に重ねる手法は、実際には何年も前からさまざまな形で存在していたが(軍事分野と医療分野は早くから採用していた)、「Google Glass」のようなウェアラブルテクノロジが大きな注目を集めるようになった今、一般市場でもさまざまな革新が登場しようとしている。
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