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香港市場に変化の兆し--最新ランドマーク「PMQ」はこれまでと一味違う

白瀧優子(アウン香港マーケティング)2014年10月01日 08時00分
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 この連載では、アウンコンサルティングの現地駐在員による、日本・台湾・香港・タイ・シンガポールでのマーケティングに役立つ現地のホットトピックを週替わりでお届けします。今回は香港から、いま現地で起きている変化、そしてその中で製品を訴求するコツをお伝えします。


PMQ(元創方)

香港の最新ランドマーク「PMQ」

 皆さんは、香港という街にどのようなイメージをお持ちでしょうか。ビジネスマンであれば「国際金融センター」「中国ビジネスの窓口」「物流拠点」、観光で来られる方であれば「夜景」「ショッピング」「グルメ」といったイメージが強いことと思います。今夏、そのイメージを覆す新しいランドマークがセントラルに完成し、話題を集めています。

 その名は「PMQ(元創方)」。名前の由来は、その前身であるPolice Married Quartersで、1951年に建設された元警察寮のこと。そのさらに前身が1860年代にできた香港初の公立学校だったことから、政府に歴史的価値が認められ、ほかの古いビルのように取り壊されてしまうのを逃れた数少ない建物です。

 PMQはこれを全面改装し、デザインとイノベーションのハブとなるべく作られた総合施設で、地元のクリエイターやデザイナーをはじめ、中堅・大手小売店のコンセプトショップ、飲食店やカフェなどがオフィス兼店舗として入居しています。

 商品は数十ドルの紙小物から、数千ドルのジュエリーやインテリアまで幅広く、これまで香港ではなかなか手に入らなかった地元のデザインアイテムやおしゃれなお土産が必ず見つかります。場所はセントラル駅から徒歩10分程度の、いわゆるSOHOと呼ばれるエリア。急な斜面の道路沿いにおしゃれなお店とローカルな屋台が混在する観光の中心地です。

デザイン・社会性を受け入れる兆し

 テナントのオーナーの一人に話を聞いてみたところ、「PMQの良いところは、政府が所有しながら非営利団体が運営をしているため、通常のモールで店舗を借りる際と比べて賃貸条件が安定しており、安心して店作りができる」とのことでした。

 PMQでは店舗だけでなく、毎月ナイトマーケットが開催されたり、野生パンダの減少に関する啓蒙として1600頭のパンダ(香港手作りで紙製)を展示する活動に参加したりするなどイベントも積極的に行っており、連日盛況を呈しています。


ナイトマーケットの様子

 一方、「商業施設運営のノウハウが足りていない。開店時間が店によってバラバラでお客さんが何時に来たらいいか分からなかったり、平日の日中などの集客力がまだまだ」という問題点もあるようです。

 「オープンして1カ月で、たくさんの関係者との繋がりができました。ただ、せっかくユニークなテナントが多く入居しているので、もっとテナント同士が関わりを持つ取り組みや、そこから生まれるシナジーにも期待しています」(オーナー)。

 現在100以上のテナントが入居しており、全店舗がウェブサイト上で閲覧できますが、日本人として「おっ!」と思うのは日本のグッドデザイン賞受賞製品を扱った「Good Design Store」と、無印良品のコンセプトストア「Found Muji」ではないでしょうか。

 アジアの中でも成熟した消費者が増加する香港で、投資価値や物珍しさばかりではなく、デザイン性や社会性がアピールポイントとして発信され、受け入れられるようになってきた兆しが見受けられます。


 アジアのハブとしての急速な経済成長と徹底した資本主義で失われつつある香港の伝統や価値観を守り、香港から世界へ発信する文化やイノベーションを作りたいという政府や主催者の思いが、高騰する家賃やコミュニティとの繋がりの欠如に問題意識を持っていたテナントのニーズと合致するとともに、ほとんど世界中のものが何でも手に入る飽和したマーケットに飽き飽きしていた消費者のニーズにもうまくアプローチができている形といえるでしょう。

 このトレンドは外からはあまり目立ちませんが、実は他にも見受けられます。たとえば、香港発信の文化の発展を目的としたWest Kowloon Cultral District。起業家・NPO支援の枠組みを場作りから行うコワーキングスペースなどが企画・設立されており、どれもPMQと通じるコンセプトを元に政府の支援と若い年代の意欲によって発展してきています。

 PMQと同じ枠組みで保存やリニューアルが予定されている歴史的建造物としては、Central Police StationやCentral Marketがあり、今後の展開に要注目です。

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