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電通が考えるネット動画広告の戦略(後編)--市場見極めつつ113年のノウハウ活用 - (page 2)

久保田朋彦(アンプリア代表取締役)2014年08月25日 11時00分
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--インターネット動画広告の分野においても、ディスプレイ広告テクノロジと同様に、プログラマティックによる買い付けが一般化しつつあります。特にノンプレミアムのコンテンツについては、プログラマティックは広く受け入れられているように思います。一方で、特に、テレビ局が制作をしているプレミアムコンテンツには、プログラマティックバイイングは馴染まないようにも思います。その中で、Guaranteed(固定CPMで在庫予約して配信できる予約配信機能)は、従来のテレビ局が行ってきた純広告と同じような概念だとも思いますし、ひとつの解決策のようにも思います。こうした点についての考えをお聞かせください。

植村:Reservationですとか、Guaranteedに関しても、いくつか類型があります。先ほど挙げた独自の世界観を売りにしているコンテンツでの場合、広告主はそのコンテンツを指名しており、コンテンツがGuaranteedなのかどうか(掲載予約が保証されているかどうか)が最優先事項になるでしょう。一方で、広告目的によっては、広告配信先のコンテンツではなく、掲載時期やボリューム(掲載総量)等、つまりはSOV(Share of Voice)のGuaranteedが優先されるケースもあります。

 純粋なプログラマティックの問題は、掲載面・コンテンツや掲載のタイミング、SOVの予約が出来ないということです。企業によっては例えば年末に集中的に売れるなど、明確な需要期のある商品を持っていることもあります。この場合、需要期の掲載価格が高いとしても、広告主は競合他社の同時期の広告掲載ボリュームも考慮しながら、広告枠を確保しなければならないわけで、それが全て予約型で完売してしまっていたらアウトなわけです。

 一方、メディア側から見れば、広告主をGuarantee(予約保証)したいという意向もあります。それは、売上計画・事業計画をしっかり立てるためでもあり、自社メディアのブランドを守り向上させるため、広告主やクリエイティブを選別したいという意図です。結果的に、広告主、メディア、クリエイティブ、さらにコンテンツもすべてがプレミアム価格なのか、動画広告がどういったマーケットプレイスにポジショニングしているのかを見極める必要があります。

 また、コンテンツや掲載のタイミングなどによって、適正な価格は異なるため、例えば価格を低く販売できる枠であれば、ターゲティング配信を活用するといったことも考えられます。こうした販売手法や売り方については、メディアと広告代理店双方でコントロールしていくということだと思っています。それがビジネスの知恵であって、交通機関にせよホテルにせよ、優良在庫に限界がある市場において、商取引や価格決定を市場に丸投げすることはありえません。

 電通としては、動画ということのみに拘泥するのではなく、新たな技術やトレンドにキャッチアップし、また創出しながらも、これまでのノウハウを活用していくことで、より顧客目線に立った事業を行っていきます。動画在庫を取り扱っていく上では、広告枠やコンテンツ、ターゲティングによって単価も適正に設定します。オンラインであっても、電通の商売ノウハウは活用できるものだと思っています。

--最後に、電通のインターネット動画ビジネスに対する本気度を教えてください。ユーザーのテレビコンテンツ消費のあり方は変わってきていますし、広告主の考え方も変化してきています。これまでにない、新しいマーケットを創造することが必要になってくると思います。そのためには、これまでにない取り組みが必要になります。どのような方法考えていらっしゃいますか。

植村:電通には、113年の歴史がありますが、この間、常に日本社会の可処分時間に寄り添って事業を行ってきました。電通自身が新たなマーケットを創出してきたこともありますが、根本として電通は、人々の利用する主要なメディアが新聞、ラジオ、テレビと移り変わると同時に、その事業領域を拡張し、重心を移行させてきた歴史があります。今後、さらに動画視聴がインターネットへと移行が進むのであれば、インターネット事業に重点を移していくことになるのかもしれません。

 インターネット動画に関しては、現時点ではその動画視聴者がどれだけ増加しているのか、注目を集めているのか、そもそも安心してナショナルクライアントに提案できる優良な動画コンテンツやメディアが揃ってきているのか、社会や業界の動向を注視しています。仮に、Huluの視聴者数が急増していたとしても、その分、競合するインターネットビデオサービスの視聴者が減少したとすれば、市場としてはゼロサムであって、電通として大幅に事業領域を変更するところまではいかないかもしれません。分析にあたっては、プレミアム市場とフリーな市場を区別して捉える必要があり、それぞれの市場における需給バランスを見極めていかなければなりません。

 電通としては、せっかくのインターネット動画コンテンツの価値と市場価格が下がってしまう事態は避けたいと思っています。クライアントが資金を投入するだけの価値のある市場を創っていきたいと思っており、一方でコンテンツ制作者に正当な対価が実現しませんと、健全な供給は継続しません。現在は潮目を見ている側面もありますが、動くとなれば迅速に動けるような準備も大切でしょう。タイミングが今年なのか、来年なのかは、まだ分かりませんが、今後、電通が大きく舵を切る可能性もあるでしょう。社を代表しているわけではないので、一般論ばかりで表現の歯切れは悪くなりますが、いずれにしても、メディアが変わったとしても、可処分時間に寄り添っていく基本的な姿勢に変わりはありません。

 新しいマーケットの創造については、一定規模の先行投資があれば、コンテンツ制作にも弾みがつき、クライアントである広告主も資金を投入することになります。あるいは、広告主の資金が潤沢に行き渡れば、良質なコンテンツの制作が進みます。順序の議論はありますが、メディア、広告主、あるいは広告代理店の誰が先行投資をしてマーケットの創造をリードするのか、著作権などの権利処理テーマ等も踏まえて、新しい取組もありましょう。

久保田朋彦
◇ライタープロフィール
久保田朋彦(くぼたともひこ):アンプリア 代表取締役、GCAサヴィアン マーケティングオフィサー
日米のメディアおよびデジタルメディア分野のM&Aアドバイザリーを専門に担当。直近では、日本テレビ放送網によるHulu日本事業の買収、博報堂による海外企業との戦略的資本業務提携、NTTドコモによるマガシークの買収、グリーによるFunzio買収、DeNAによるngmocoの買収、電通によるInnovationInteractiveの買収、SixApart Inc.の日本法人の売却、電通によるインド子会社の完全子会社化といった案件を、米国チームとともに成功に導くなど、日本企業と米国のテクノロジベースのデジタルメディア企業との橋渡しを実現。
その他、メディアおよびテクノロジー業界でのカンファレンスにも多数スピーカーとして参加。AMPLIA創業前は、GCAサヴィアン、ソニー、UBS等にて、M&Aアドバイザリー業務、経営企画業務等に従事。

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