日本国内では、2013年の132億円から、2017年の640億円に拡大することが予測されているインターネット動画広告市場(出典:シード・プランニング)。インターネット広告市場全体に占める動画広告構成比は6.9%まで増加すると予測されており、今後も存在感は増してくるものと予測されています。メディア企業、広告代理店だけではなく、多くの広告主もインターネット動画広告の活用方法について、さまざまな取り組みを進めています。
今後、日本のインターネット動画広告市場がどのように発展していくのか、ということは多くの企業が高い関心を持っているところだと思います。そこで、すでにインターネット動画広告市場が42億ドル(2013年実績)を超える米国インターネット動画広告市場の動向を先行指標として、日本のインターネット動画広告市場がどのような広がりを見せるかについて、日米のテクノロジ、メディア、広告代理店など、業界のキープレイヤーへのインタビューを通じ、探ってみたいと思います(全6回)。
第1回目の今回は、米国インターネット動画広告市場の現況について、GCAサヴィアン/アンプリアの米国チームが取りまとめた資料をベースに解説いたします。
米国のインターネット動画ユーザー数は1億7900万人(2013年)、3年後の2016年には2億人を超えるといわれています。特に、携帯デバイスからのユーザーの伸びが高く、2013年7330万人から、2016年1億1000万人と、年率14.5%成長すると予測されています。
また、米国では全世帯のうち40%(4700万世帯)がインターネットに接続するテレビを保有しており、2020年までには、その比率は80%になると予測されています。これらの多くは、ケーブルテレビの利用者からの乗り換えのユーザーです。例えば、Netflixとケーブルテレビの両方を契約しているユーザーの数は88%(2010年)から、80%(2014年)となっています。また、若年層(18~34歳)の40%は、ケーブルテレビからインターネット動画への契約の切り替えに積極的との調査結果も出ています。
一方で、インターネット動画サービスをメディアとして捉えた場合、どのようなプラットフォームが主に使われているか、ということを見てみると、(1)動画視聴回数の観点からは、Google/YouTube(月間126億回)、Facebook(月間50億回)と、他社を圧倒している半面で、(2)コンテンツごとの視聴時間では、YahooやVimeoが7分程度と他社よりも長く、ユーザーのエンゲージメントの獲得目的ではより有用であることが分かっています。
また、これまでにない新しい潮流として、「MCN(Multi Channel Network)のマーケット規模の拡大」が挙げられるかと思います。MCNマーケットがひとつの市場として確立し、クリエイターが独自にコンテンツを提供でき、それ自体が新しいビジネスチャンスとして捉えることができるようになってきています。その結果、インターネット動画コンテンツの中でも、マス向けに作られた高品質かつ合法なコンテンツが増加してきています。
特に、YouTubeがこのマーケットの整備を主導していることが大きく影響しています。YouTubeが、これらのプロフェッショナルコンテンツの市場整備を進めていることは、今後テレビ広告市場にも大きな影響を与えることが予想されます。言うまでもなく、YouTubeは全世界で8億人のユーザーを抱えているプラットフォームであり、また、Googleの“Deep pockets(潤沢な資金)”も活用できる(例えば、前金で100億円をコンテンツパートナーに支払い、追加で200億円をプレミアムチャンネルのプロモーションに使っている)といったことは、同社の事業拡大に有利に働いています。
ディスプレイ向けの広告ターゲティング技術がインターネット動画にも応用されることで、動画広告技術プラットフォームは、急速な成長が予想されており、2014年には、約3500億円超まで達すると見込まれています。特に、ディスプレイ広告テクノロジと同様に、RTB(Real-time Bidding)がインターネット動画広告配信の中でもキーコンポーネントとみなされています。
視聴される動画コンテンツが増えるほど、動画広告市場の拡大スピードはさらに速くなると考えられます。今後は、各動画プラットフォームを統合し、広告在庫の購入や配信の際に生じる複雑性を解決するテクノロジに対するニーズが増加していくと思われます。
広告テクノロジプロバイダにとっての最優先課題は、複数のインターネット動画プラットフォームに自社のテクノロジを接続することです(さまざまな視聴形態に対応し、収入機会を最大化させるため)。一方で、インターネット動画広告の進化は、インターネットビデオ市場の拡大スピードに追い付けていない、という側面があり、広告テクノロジプロバイダにとって市場参入の機会は残されていると考えられます。
広告配信プラットフォームといった観点からは、プログラマティックビデオのプラットフォームプロバイダであるSpotXchangeやLiveRailが上位にランキングしている一方で、効率的な広告配信といった観点からは、Huluが突出しています。これは、デバイスの普及および視聴ユーザーが増加した結果、コンテンツの配信そのものは増加をしたものの、マネタイゼーションといった観点からは、まだ課題がある、ということを浮き彫りにしたものと思われます。より的確なターゲットオーディエンスに到達するためのクロスチャネルをどのように活用するかが、今後求められるようになると考えられます。
大手のメディア、テクノロジ企業にとって、インターネット動画市場はますます重要になってきています。Googleなどの大手企業は、次世代のメディア消費に対応するため、オンラインビデオ事業の買収検討・実行を着実に進めています。
以上、現在の米国市場でのキーワードをもとに、インターネット動画市場の現状をまとめてみました。
次回より5回にわたり、日米のテクノロジ、メディア、広告代理店など、業界のキープレイヤーへインタビューすることで、今後日本でインターネット動画市場がどのような広がりを見せるのか、その可能性と課題について検討していきたいと思います。
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