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「アナ雪」にも「LINE」にも、広告はいらない!?--広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい

本田哲也(ブルーカレント・ジャパン代表取締役)2014年08月14日 16時04分
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 2週間前に発売した僕の新刊が、売れている。ありがたいことだ。それが、7月30日に刊行した『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)だ。

 今や飛ぶ鳥を落とす勢いのメッセージアプリ「LINE(ライン)」でおなじみ、LINE株式会社上席執行役員の田端信太郎氏との共著だ。

 田端氏はその経歴から、「メディア野郎」として有名。戦略PRのプロとメディアのプロがタッグを組んで、ズバリ「情報爆発・消費者主導の時代に、人はどうすれば動くのか?」を論じようというテーマだ。

 なぜ、ここまで反響があるのか?ひとえに、この挑戦的なタイトルにつきるだろう。僕たちはしょっぱなから、「マスメディアに取り上げられることや、大量の広告枠を買うこと、それ自体で人を動かそうと思うのは、もうあきらめたほうがいい」と断言している。

 いやもちろん、「そこまで言うか!」、「LINEだって広告してる!」などなど(笑)、脊髄反射的な反応はすべて覚悟したうえでだ(案外なかったのだが)。

 そうした想定反応への気遣いよりも、僕は、「何となく」を「はっきり」したことにするほうに実があると信じた。このタイトルは、単に挑戦的なわけじゃない。(広告メディア業界を超えた)「みんなの何となく」が吐露されたものなんだと思う。

 「不易流行」というコトバがある。晩年の松尾芭蕉が、俳句の本質をとらえるための理念として提起した言葉だ。田端氏はまずこの言葉を引き合いに出す。

 「『不易』は時代の新古を超越して普遍なるもの、『流行』はそのときどきに応じて変化してゆくものを意味するが、両者は本質的に対立するものではなく、真に『流行』を得ればおのずから『不易』を生じ、また真に『不易』に徹すればそのまま『流行』を生ずるものだと考えられている」

 広告やメディアで人を動かそうとすることにも、同じことが言えないか。次から次に出てくる「XXXマーケティング」やアドテクノロジーは、いわば「流行」。

 意味がないわけじゃないけれど、マーケティング・コミュニケーショにおける「不易」がおざなりになっていないか。

 時代を超えても変わらないような本質をもっと論じないといけない――マーケティングの「不易流行」――それが今回の本当のテーマなのだ。

 では、人を動かすときの「不易」ってなんだろう。僕はずっと前から、それは「人の人数規模」にあると思っていた。

 新聞からテレビ、インターネットそしてソーシャルメディアといった「媒介」の進化。その進化と二人三脚でもある、広告やPRといった「手法」の多様化。

 こうしたことを全て取っ払ったところで、昔も今も変わらないこと。

 それは「いったい、何人の人を動かすのか?」ということと、そこにある人間心理への洞察じゃないかと思うわけだ。

 そうした「不易」のおさえがまずあるべきだ。そして、そのうえで、どう実行してくかという「技」としての広告やメディアがある。

 動かしたい人数規模と広告やメディアの組み合わせは、さしずめ「ゴルフクラブ」のようだ。

 ゴルフでのクラブの使用が、ひとり14本までに制限されているように、人を動かすクラブ=広告やメディアも、かけられる予算や時間や労力は限られているのだ。

  • 技のゴルフクラブ

 それをエイヤ!で図式化したのが、この「技のゴルフクラブ」だ。同心円はリーチする人数規模。1000人から10億人までの7目盛りだ。

 そしてこの同心円は、「コントロール」と「アンコントロール」に分かれている。

 広告や公式アカウントなど、「あなたがあなたとして言いたいことを言える」世界と、PR、UGC(消費者生成コンテンツ)やインフルエンサーなど「第三者が伝えてくれる」世界。

 いまや世界で5億人ユーザーに迫る「LINE」は、女子高生やママ友のクチコミ(アンコントロール)をコアにユーザーを増やし、しかるべきステージでタレントのベッキーを起用した広告(コントロール)でその規模を増幅させた。

 さらに世界で3億人ユーザーを超えたあたりで、世界中のユーザーがスタンプを制作販売できる「LINEクリエイターズマーケット」を導入。

 これはある種のUGC(アンコントロール)として機能する。

 今年空前のヒットとなったディスニー映画「アナと雪の女王」も、初期段階の認知の大きな原動力となったのは、主題歌「Let It GO」を歌う一般の人の動画投稿(アンコントロール)だ。

 話題化したところで広告(コントロール)も打ち、動員が進めば「興行収入が100億円突破!」とPR(アンコントロール)し、社会現象化させた。

 「広告やメディアが機能しない」というわけじゃない。LINEもアナ雪も、同心円が外に広がる(=参加関与人数規模を増やす)に従って、「最適なゴルフクラブ」を選んでいるだけのことなのだ。

 かつ、コントロールとアンコントロールを巧妙に使い分ける。

 その昔、「ゴールデンタイム」というコトバがあった。日本中の家族がそこにいる。莫大な広告費が動く。ゴールデンタイムは、本当にたくさんの人を動かしていた。

 人を惹きつけ、動かす力は、「広告やメディアそのものの価値」だったのだ。

 ゴールデンに磨くべきなのは、あなたの商品やサービス自体、そしてその「ストーリー」。広告やメディアはそれを「増幅」させるだけに過ぎない。

 そして、ゼロに何をかけてもゼロになるように、価値のないモノは増幅されない時代でもある。

 広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめましょう。

◇ライタープロフィール
本田 哲也(ほんだ てつや)
ブルーカレント・ジャパン株式会社代表取締役。戦略PRプランナー。米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー。セガの海外事業部を経て、1999年、世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年、スピンオフのかたちでブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。P&G、花王、ユニリーバ、アディダス、サントリー、トヨタ、資生堂など国内外の大手顧客に、戦略PRの実績多数。戦略PR/マーケティング関連の著作講演実績多数。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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