「コンテンツ」だけでは意味がない理由--「マグネティックコンテンツ」が勝者となる その1

本田哲也(本田事務所代表取締役)2013年05月30日 10時30分

 ここ最近になって、広告やマーケティングの世界では再び「コンテンツの時代だ!」という声が高まっているように思える。

 さまざまな理由があるだろう。企業のオウンドメディアでの成功例がやっと増え始め、良質なコンテンツさえ開発できれば、広告出稿よりも効率よく消費者へ訴求することが可能になった。

 ソーシャルメディアの普及によって消費者のメディアハビットは多様化し、画一的なメディアプランニングではもはや太刀打ちできない。

 そんな潮流の中で、「メディアありき」から「コンテンツありき」へと、あらためて発想の転換が起こっている。

 また、コンテンツ制作費の自由度も増している。10年ほど前、「ブランデッドコンテンツ」という考え方が登場した。BMWのウェブムービーなどが有名だが、実はその予算はCMクリエイティブ並みだった。

 それが今は、はるかに低予算でソーシャルで拡散するようなコンテンツが登場してきている。――さまざまな背景で、いわゆる「コンテンツマーケティング」に注目が集まり始めている。

 では果たして今どきのマーケターは、これまでのメディアバイイングやプロモーションの費用を、できるだけコンテンツ開発に注ぎ込むべきなのか。

 答えは半分イエスであり、半分はノーだ。コンテンツの重要性が増していることは間違いない。

 問題は、「パワーを持つコンテンツとはどのようなものなのか?」その定義や認識がこれからますます大切になる。

 今回のコラムでは、そのひとつの答えになりうるキーワードを紹介したい。それが「Magnetic Contents(マグネティックコンテンツ)」という考え方だ。

 “Magnetic”とは、辞書的には「磁気を帯びた」というそもそもの語源から、翻って「魅力的な」「人を惹きつける」という意味も持つ形容詞だ。

 もう想像がつくと思うが、「すべてを惹きつけてしまうコンテンツ」という意味合いがこのワードには込められている。

 米国では2011年に「Digital Impact: The Two Secrets to Online Marketing Success」で初めて提唱され、すでにデジタルクリエイティブやPRの領域でバズワード化しつつある。

 ここ数年ソーシャルやPRの重要性が唱えられるのに呼応して、従来からあった「楽しい」「感動する」「驚きのある」・・・などに加えて、「トーカブル(口の端に上る)な」「シェアラブル(共有しやすい)な」「メディアフック(ニュース性)のある」・・・などが叫ばれるようになった。

 しかしながら、これらは一体となってパワーコンテンツを創出する要素でありひとつひとつで考えても仕方がない。

 たとえば「ソーシャルで拡散されるコンテンツ」と「メディアに取り上げられるコンテンツ」は、それぞれに性質が違うし生み出す方法論も違う。

 よって、ひとつひとつ考えていくと混乱しがちだ。これらを包含し、ソーシャル時代に影響力を発揮するコンテンツ(=情報の中身)のあり方を総称したものが、「マグネティックコンテンツ」だと考えるべきだろう。

 では具体的に、「マグネティックである」ということはどういうことなのか。わかりやすい最近の事例が、2013年の3月にコカ・コーラがインドとパキスタンで実施し、日本でもソーシャル上でかなり話題になった「Small World Machines」キャンペーンだ。

 そもそも同じ祖国でありながら、歴史的に対立を繰り返し、今なお緊張関係の続く両国。

 コカ・コーラは「スモール・ワールド・マシン」と名付けた自販機のようなマシンを両国に1台ずつ設置した。

 このマシンの前に立つと、互いに隣国にいる相手の姿を見ることができ、両者に共通の指令――「相手と手を合わせる」「踊る」など――が言い渡される。

 これを双方が息を合わせてクリアすれば、マシンからコーラが出てくる、というしくみだ。これ以上説明の必要もないだろう。素晴らしいアイデアだ。

 これは広告なのか? メディアなのか? OOH(屋外広告)なのか? テレビCMでも同じようなことはできたのか――どれも首をかしげてしまうだろう。これこそ「マグネティック」な発想によるコンテンツの創出なのだ。

 日本のクリエイティブ力やコンテンツ制作力はとてもレベルの高いものだ。しかしながら、ここでいう「マグネティックな発想」に及んでは、残念ながらまだまだ伸びる余地があるように思える。

 僕は、これからのデジタルマーケティングやソーシャルメディア、PRの領域において、「マグネティックコンテンツ」への注力は必須と考える。

 「コンテンツをつくろう」から「どんなコンテンツであるべきか」に早急に頭を切り替える必要がある。

 さて、次回のコラムでは、引き続きマグネティックコンテンツとその創出について、海外の先進事例や開発スキームについて掘り下げていこうと思う。

◇ライタープロフィール
本田 哲也(ほんだ てつや)
1970年生まれ。ブルーカレント・ジャパン代表取締役。戦略PRプランナー。米フライシュマンヒラード上級副社長兼パートナー。セガを経て、1999年、世界最大規模のPR会社フライシュマンヒラード日本法人に入社。 2006年、スピンオフのかたちでブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。P&G、花王、ユニリーバ、アディダス、サントリー、トヨタ、資生堂など国内外の大手顧客に、戦略PRの実績多数。戦略PR/マーケティング関連の著作、講演実績多数。著書に「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「新版 戦略PR」(アスキーメディアワークス)など。最新刊「ソーシャルインフルエンス」(アスキーメディアワークス)を2012年6月に上梓。ブルーカレント・ジャパンは「2012年PRアワード ソーシャルコミュニケーション部門」最優秀賞を受賞。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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