2014年広告メディア業界展望--ソーシャルメディアという言葉は消え新しいブランドムーブメントが始まる

本田哲也(本田事務所代表取締役)2014年01月31日 17時16分

 2014年も幕を明けた。広告/PR/マーケティング業界にとって今年はどのような年になるのか。

 僕が今強く感じていることが、2014年は「ニューブランドムーブメント」とでも言える潮流が始まるのではないか、ということだ。

 かつて2000年前後、世界的にいわゆるブランドムーブメントが盛り上がった。

 幾多の「ブランド関連本」が出版され、セミナーやカンファレンスが開催され、多くの日本企業で「ブランド室」なるものが創設された。

 「ブランド」「ブランディング」は華々しく扱われ、ある一定の理解を促進したものの、その多くはVI(ビジュアルアイデンティティ)の整理・統合、またブランド資産価値の把握などに帰着し、「ではビジネスに貢献する具体的継続策は?」という問いに答える前にフェードアウトしてしまった。

 それと入れ替わるように勃興した「WEB2.0ムーブメント」に端を発し、時代はデジタルテクノロジーとソーシャルメディアの進化と普及のスパイラルを繰り返し、現在に至る。

 そして、その2013年あたりで、これらもある程度「落ち着いた」と言えるのではないか。

 先日発表された2014年予測の中で、フェイスブックのVPであるBriand Boland氏は 「『ソーシャルメディア』という言葉は、ゆっくり消えて行くでしょう」とまで言及している。

 広告PR、メディア、マーケティングの世界は、干支がひとまわりするくらいの長いジャーニーを経て、過去とは様変わりした環境下で、改めて「ブランド」のあり方と役割に注目するべきだ。

 今回は、新しいブランド論のポイントとなる要素を、大きく2つの観点から見てみよう。

 ひとつは「ブランドジャーナリズム(Brand Journalism)」の本格化だ。ブランドジャーナリズムとは、米国で数年前から提唱されてきた考え方。

 日本では「企業のパブリッシャー化」という表現のほうが通りがいいかもしれない。

 ただし、ブランドジャーナリズムは「オウンドメディアの活用」のような狭義の話ではない。

 いかにブランドの発信にジャーナリスティックな要素を組み込むかという基本思想だ。

 現時点での代表例に、昨年開始された米コカ・コーラの「Coca-Cola Journey(コカ・コーラジャーニー)」がある。

 同社はブランドジャーナリズムを進化させ、「2015年までにプレスリリースを撤廃する」とまで発言している。

 ある側面では、これは「商品(ブランド)広報」の究極の進化形でもあり、別の側面では、「商品(ブランド)広告」の進化形とも言える。

 世界の広告メディア界隈で、議論が白熱している「ネイティブ広告」も、ブランドジャーナリズムというエコシステム内の方法論のひとつに過ぎない。

 いずれにしても、ブランドジャーナリズムは、商品・ブランドを単に「話題にする」ということではない。

 生活者にとって意味あり価値のあるコンテクストと、ブランドのあり方をいかに連動させていくか――これに尽きるわけで、つまりは次世代のブランドのあり方に直結する話である。

 もうひとつが、「ブランドアドボケイツ(Brand Advocates)」。いくつかニュアンスの異なる定義が存在するが、ざくっと言えば「そのブランドを熱心に支持し推奨する個人またはグループ、あるいはその推奨行動自体」という感じだろう。

 ここで重要なのがアドボカシーという考え方なのだが、これがまた対訳が難しい。

 例えばウィキペディアでは『本来「擁護」や「支持」「唱道」などの意味を持つ言葉で、日本では近年、「政策提言」や「権利擁護」などの意味で用いられるようになっている……という具合だ。

 まあ少なくとも一見ブランドマーケティングに関係するとは思えない。

 僕なりに解説すれば、アドボカシーの活用とは、世の中に存在する「ブランド推奨のうねり」みたいなものを、発掘して可視化させ、ブランド強化につなげていくことだ。

 その具体的な方法論として、ブランドアドボケイツ(アンバサダー)と呼ばれるような人を発掘し、推奨してもらうという手段もある。

 なので、これをタレントに商品をブログでお勧めしてもらうことだとか、ちょっとそういう次元と混乱していけない。

 2014年はネット動画が本格化するとも言われているが、その観点からは「ユーチューバー(YouTuber)」の存在感が大きくなるだろう。

 アメリカでは先行して(ブランドアドボケイツとしての)ユーチューバーとブランドのパートナーシップが本格化しており、年収1億円超えのユーチューバーもいると言われている。

 とくに、iJustine 、Bethany Motaなど、ほぼ毎日レベルで動画をアップする若手ユーチューバーの台頭が目覚ましい。

 日本を代表するユーチューバーのHIKAKIN(ヒカキン)が、薬用シャンプー「スカルプD」のテレビCMに逆進出したのも記憶にあたらしい。こうした現象を、ブランドアドボケイツの観点から発展させることが重要だろう。

 ここ数年、アドテクノロジー、ビッグデータ、ソーシャルメディア界隈はおおいに進化し、多くのバズワードも生まれ、業界議論も進行した。

 しかしながら、そろそろもう各論は置いておいて、目的意識にアテンションを振り向けたほうがいいように思える。

 本質的な目的はそう多くないし、その中でも「次世代型のブランド構築と維持」というのはとても重要なトピックである。

 2014年は、「新しいブランドムーブメントの発芽の年」になるだろう。

◇ライタープロフィール
本田 哲也(ほんだ てつや)
1970年生まれ。ブルーカレント・ジャパン株式会社代表取締役。戦略PRプランナー。米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー。セガの海外事業部を経て、1999年、世界最大規模のPR会社フライシュマン・ヒラードの日本法人に入社。2006年、スピンオフのかたちでブルーカレント・ジャパンを設立し代表に就任。P&G、花王、ユニリーバ、アディダス、サントリー、トヨタ、資生堂など国内外の大手顧客に、戦略PRの実績多数。戦略PR/マーケティング関連の著作、講演実績多数。著書に「その1人が30万人を動かす!」(東洋経済新報社)、「新版 戦略PR」(アスキーメディアワークス)など。最新刊「ソーシャルインフルエンス」(アスキーメディアワークス)を2012年6月に上梓。ブルーカレント・ジャパンは「2012年PRアワード ソーシャルコミュニケーション部門」最優秀賞を受賞。

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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