スマートデバイスの普及やネットワークの高速化などにより、端末を選ばずいつでもどこでも動画を見られる環境が整いつつある。これを好機とみて、2013年後半にビデオ広告事業への本格参入を表明したのがヤフーだ。「Yahoo!ニュース」や「スポーツナビ」などの主力サービスに、映像と音声によるビデオ広告を導入し、より消費者の記憶に残る広告コンテンツを充実させることで、収益の柱である広告事業全体を伸ばしたい考えだ。
実は世界的にみると、日本はネットでのビデオ視聴において欧米に遅れをとっている。調査会社のcomScoreやNielsenによれば、米国、英国、日本の3カ国で比較した場合、インターネット利用率はいずれも約8割で横並びである。しかし、インターネットを利用した動画利用率になると米国と英国が約6割なのに対して、日本だけその半分の約3割になってしまう。
それはなぜか。ヤフー マーケティングソリューションカンパニー ビデオ広告ユニットマネージャの松原愛氏は、その理由として高い拡散機能をもつソーシャルメディアとの関係性を挙げる。米国と英国はFacebookの利用率が約5割に及ぶと言われているが、日本ではまだ15%程度にしかすぎないためだ。この点については、「日本はLINEでどう拡散するかが重要になるかもしれない」と松原氏は話す。
Kantarや電通の調査によれば、米国では約7兆4000億円のテレビ広告費の3.7%にあたる約2800億円が、英国では約7000億円のテレビ広告費の7.2%にあたる508億円がビデオ広告に投入されている。そのため、日本でも約1兆7800億円のテレビ広告費の4~7%にあたる金額がビデオ広告に投じられるのではないかと、松原氏はみている。
対前年比での成長率をみると、米国のビデオ広告市場は20%、英国にいたっては200%も成長している。しかし、日本はそのさらに上をいく。DACによれば、日本は2012年度の第1~4四半期で400%という猛烈な勢いで成長しているという。ヤフーでも2014年度は「前年比で10倍(1000%)近い成長を見込める」(松原氏)と期待を寄せている。
このように今後の成長が期待されるビデオ広告市場で、ヤフーの最大の“武器”になるのが月間560億PVを誇るポータルサイト「Yahoo! JAPAN」のリーチ力だ。同社ではテキスト中心だったYahoo! JAPANのコンテンツの映像化を進め、2014年度末までにビデオコンテンツとビデオ対応サービスをそれぞれ現在の10倍に拡大。マルチスクリーンで現在の3倍の6000万人のユーザーを創出するとしている。
松原氏は、マルチデバイス時代にはビデオ広告の価値がより高まっていくと話す。今では「職場はPC、隙間時間や移動中はスマートフォン、自宅はタブレット」といった具合に、1日の間に複数の端末を使い分けている人も多い。そのため、広告主はマルチスクリーンを横断したアプローチが必要になるのだ。
そこで、ヤフーでは予約配信型のビデオ広告プラットフォームソリューションを提供する米Videologyと提携。Videologyのプラットフォームでは、デバイスを横断した効果指標を把握できるほか、1つのビデオ広告素材でPCやスマートフォンなどのマルチスクリーンに配信できるため、より効率的に訴求できるという。
ビデオ広告はテレビを見ない若年層などにリーチできるという意味で期待されているが、テレビCMを見た人がPCやスマートフォンでもビデオ広告を見ることによる相乗効果も高いという。さらに、ヤフーではビデオ広告でアクションしなかった人に対して、ディスプレイ広告やリターゲティング広告を通じて再アプローチできる強みも持っている。「連続してインプットすることで、ずっと記憶に残りやすくなる」(松原氏)。
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