この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。
カケザンは、2012年8月に設立されたD2Cグループのプランニングブティックで、新時代のマーケティングを支援するスペシャリストとしてクライアントの課題解決に取り組んでいる。これから3回に分けて、カケザンが考えるモバイルを主軸としたデジタルマーケティングの在り方について説明したい。
まずは、以下の12のチェックリストを見てほしい。
これらの問いにNOが多い企業は、今後のマーケティング戦略において、何かと後れを取る可能性があると思っている。
“AISAS”という消費者の心理プロセスをフレームワーク化したものがある。AISASは今でも重要なモデルだが、多くの企業はAISASの上流である「Attention」と「Interest」にばかり注意を向け、予算配分をしてしまう傾向があるように感じている。簡単にいえば、「とにかくテレビCMをやりましょう」「目立つサイトを作りましょう」「バナー広告にお金を掛けましょう」と提案するのだ。
その結果、費用がかかるわりには、一番大切なActionにつながっていかないケースが見られる。また、KPI(重要業績評価指標)もズレてしまい、認知率やサイト訪問者の数だけで評価をしがちになってしまう。重要なのは何人が実店舗まで足を運んだか、どれだけ売上が増えたのかを考えることなのだ。
マーケティングのゴールはAction(購買する、資料請求をする、会員になる)であり、いかに売場に生活者を連れてくるか、新たな売場を作るかがポイントになる。要素をあげると店舗施策、CRM、eコマース、クーポンなどであり、そうすると1年365日持ち歩くスマートフォンの活用が、今後ますます重要になってくる。
たとえば「寒い日の帰宅時間を狙って、ダウンジャケットを薦める」「空港での待ち時間に旅行保険を薦めて、その場で申し込んでもらう」「新パッケージのドリンクを店頭で見つけてもらう」といったニーズも、スマートフォンの持つプッシュ通知やGPS、画像認識機能などを活用すれば満たすことができる。
Actionの場面でこうした展開を考えることで売上の拡大を見込める。また、スマートフォンの普及によって、そのための現場発想がしやすくなった。店頭で商品の口コミ情報などを検索する人や、友達から評判を聞いてすぐに検索する人も多いだろう。だとすれば、「店頭で家電の口コミ情報とネット価格を調べている人に、アプローチする」「友だちが絶賛していたマスカラをスマートフォンで検索している人に、そのままオーダーしてもらう」ことができないかと検討すべきだ。
つまり、検索行為をすぐにeコマースにつなげて、購入まで導く。あるいは店頭での追加情報で購買の背中を押すのだ。いずれにしても、これからのスマートフォンは“訓練された店員”の役割も担えるのではないだろうか。
2年ほど前に、元ヤフーのチーフ・デザイン・アーキテクチャであるルーク・ウロブルスキー氏が、“モバイル・ファースト”というキーワードを提案した。これは主にデザイン面での話だが、PCサイトのデザインを縮小する形でモバイルに対応させるのではなく、最初にモバイル、つまりはスマートフォンに最適化した画面構成を考えるべきだという考え方だ。
そうすることで選択と集中が行われ、コンテンツがシンプルで分かりやすくなる。これにより目的もより明確になり、イノベーションも起こりやすくなるということだ。もちろんシンプルにするだけでなく、そこにジャイロ、QR、カメラ、マイク、スピーカーといったスマートフォンの機能を掛け合せることで、さらにイノベーションは起こりやすくなるのだ。
たとえば、無料通話・メッセージアプリ「LINE」もスマートフォンファーストで登場したサービスだ。今や世界で3億7000万人のユーザーを抱えている。カメラアプリ「Instagram」もスマートフォンに特化したサービスであり、月間アクティブユーザー数は1億5000万人、1日の“いいね!”の数は平均12億にのぼるといわれている。
また、日本交通のタクシー配車アプリや、ドミノ・ピザのオーダーアプリなど、新たなビジネスを創造して裾野を広げることに成功した企業も出てきている。ちなみに、タクシー配信アプリは100万ダウンロードを超えており、これによる売上は25億円に上っている。またドミノ・ピザのアプリも50万ダウンロードを超えており、売上は20億円を計上している。
“ゴールから発想する=スマートフォンから発想する”ことで、マーケティングイノベーションを生み出せる可能性が広がるのだ。
(執筆:カケザン クリエーティブ・プランナー 新野文健)
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