エンタープライズ向けのSEO管理分析プラットフォーム「Ginzametrics」を運営するGinzamarketsが1月に開催したカンファレンス「Found Conference in Tokyo」。同カンファレンスの「本業とシナジーを持たせるメディアを構築する」と題したセッションでは、事業とメディアでシナジーを生むためのメディアの効果的な運用について、リコー総合経営企画室新規事業開発センターVR事業室の野口智弘氏、ウェブメディア「エンジニアtype」編集長の伊藤健吾氏、オーマイグラス取締役COOの六人部生馬氏、モデレーターにインフォバーンコンテンツディレクターの長田真氏が登壇した。
野口氏は、リコーイメージングが運営する「GR BLOG」を管理管理している。2005年からスタートした同ブログは、グループ社員がGRシリーズをはじめとするリコーのカメラについての情報や、写真を撮る楽しさなどについて日々更新している。
「カメラメーカーにとって、カメラを売るだけではなく、カメラで撮影した写真が撮影者の手元にずっと残ることが大事だと考えている。思い出や記憶を残す写真文化のプロダクトとして、どうやってカメラを楽しむか、といったことをコンセプトに運営している」(野口氏)
商品をPRするのではなく、ブログを通じたユーザーとのコミュニティも含めたものすべてがGR BLOGの価値だと野口氏は語る。
伊藤氏が編集長を務めるエンジニアtypeは、キャリア転職サイト「@type」などを展開するキャリアデザインセンターが運営している。転職サイトの掲載求人の送客とは別に、独立メディアとして独自のコンテンツや広告事業なども手がけている。
「エンジニアtypeは転職メディアではなく、エンジニアやIT関係者の『創る』を応援するメディア。転職活動をしていないユーザーの方々にも中長期的な接点をもつことを目的としている。ユーザーの仕事に影響しそうなニュースの裏側や、人が持つ経験知をインタビューなどを通してユーザーに知ってもらいながら、創り手が新しい価値を生むことを応援している」(伊藤氏)
オーマイグラスは、メガネECサイトを事業としている。その中で、メガネやサングラスに関する情報を集めたオウンドメディア「OMG Press」を運営している。メガネに少しでも興味を持ってもらったり、自分に合ったメガネ探しの支援をしたりすることが目的だ。
「OMG Pressは、メガネに関するあらゆる情報を伝えることが運営方針。あくまでニュートラルな立ち位置で、自社で扱っていないブランドも紹介している。2年ほど運営しているが、現在では著名ブランドから記事掲載の依頼があり、そこからECへ出品していただくなどの流れができている」(六人部氏)
月間ユニークユーザー(UU)は10~15万人程度で、そのうち10.5%が自社のECサイトへ遷移しているという。ECの注文の10~20%程度がOMG Press経由となるなど、自社事業に対して大きく貢献していると六人部氏は語る。
野口氏は、GRはプロのカメラマンなどにも愛用されているのが特徴だとし、「GRファンのクリエーターの方々が、インタビューでGRについて熱心に語ってくれている。カメラに関してだけではなく、自身のクリエイティビティと写真との関係なども語っていただき、そうした内容を伝えることでカメラの良さを伝えるようにしている」と語る。
六人部氏は、メディアを立ち上げるにあたりメガネ業界が持つ課題を挙げた。それまで、ユーザーはどこのメーカーのメガネを購入したか意識していない人が多かったという。メガネブランドの価値を高めるためには、購入時以外におけるブランド認知をあげることが大事だとし、消費者にとって良いメガネ情報を伝えることがメガネ業界にとって重要な要素になると考えたという。
伊藤氏は、「毎日読むものではないため、転職情報が身近ではない」といった転職サイトの問題点から、毎日読みたいメディアであることが大切だと考えたという。2011年からスタートしたエンジニアtypeは、毎日コンテンツを更新し、半数を占めるインタビューコンテンツ以外にも、エンジニアの方々の寄稿をもとに、エンジニアにとって必要な情報を伝えている。
メディアを運営するにあたって意識していることは、といった質問に対して、カメラの一般的な内容ではなく、メーカーならではの情報やユーザー視点を意識していると野口氏は語る。同時に、新規のGRユーザーでも読みたくなるよう、平易な内容にすることを心がけているという。
六人部氏は、メディアは自社の一事業として据えているため、読者にとって有意義な情報であることが最も大切だとし、ソーシャルメディアの広がりやページビュー(PV)数などを指標にすると同時に、主義主張ではなく客観的な事実に基づいた内容を重視していると語る。
伊藤氏は、編集長として最も大切なのはコンセプトだと話す。タイトルと中身のズレ、炎上によるPV数を稼ぐようなものではなく、あくまでもコンセプトに沿ったコンテンツを作れるかが重要だという。
「コンセプトなきコンテンツは意味がない。SEO対策やPV数稼ぎのためのコンテンツではなく、他のところでは読めない情報をどう作っていくか。タイトルも本文も含めて、キャリアに少しでも役に立つ情報を愚直に作り上げていくことがユーザーにとって最も大切」(伊藤氏)
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