日本でも、最近の調査で、10代の7割近くが「LINEがないと困る」と回答しているように、世界的に10代の間で利用が大きく伸びているのがモバイルアプリだ。前回は戦いの場はFacebookからモバイルメッセージングへ移っていることを説明した。中でも、セキュアなメッセージングサービスが人気を集めているようだ。
FacebookによるWhatsAppの買収が発表された3日後、WhatsAppのサーバが3時間半ダウンした。その後24時間で、TelegramとLINEが、それぞれ200万人のユーザーを新たに獲得したという。
さらに、買収発表の5日後、アップルストアでのTelegram Messengerのダウンロード数は、3倍の1日80万~100万に達し、WhatsAppを抜いて第1位となった。50カ国ほどでダウンロード数が最多のiPhoneアプリとなり、ユーザー数は、さらに500万人増えたという。
Telegramは、2013年夏に、ロシア最大のSNS、フコンタクチェ(Vkontakte)の創業者で「ロシアのザッカーバーグ」とも呼ばれるドゥーロフ氏によって、ベルリンで非営利で立ち上げられた英語のモバイルメッセンジャーだ。スノーデン元米諜報機関職員がロシア逃亡で世界を騒がせた際、同氏にTelegramでのセキュリティ担当職をもちかけたドゥーロフ氏だが、Telegramを立ち上げた理由はロシアの諜報機関が盗聴できない通信ツールを作りたかったからだという。
Telegramのウリのひとつが「最強の暗号化」で、ハッカーらに「破れないはずがない」と挑まれたため、暗号化プロトコルを最初に破った人に20万ドルの賞金を提供するとし、2013年12月にプロトコルの脆弱性を指摘したロシア人に10万ドルが支払われた。
さらに、設定時間後は送信した写真を自動的に削除できる機能が人気のSnapchatと同様、「秘密のチャット」機能ではチャットの記録を自動的に削除できる(設定可能時間2秒~1週間)。また、スマホだけでなく、タブレット、Windows、Linux、ChromeBookなど複数のデバイスでシンクロできる点も人気のようだ。
ユーザー数を増やしたのは、TelegramとLINEだけではない。WhatsAppのユーザーが3000万人いるドイツでも、スイスのスタートアップ、Threemaに移行するユーザーが増えた。WhatsAppの買収発表後、アップルストアの有料アプリランキングで1位となり、同社のユーザー数は倍増した。社員3人の同社ではユーザー急増の対応に苦慮したようだが、Telegramと同様、エンドツーエンドの暗号化を提供しているのが好まれたようだ。
サーバ管理者ですら暗号化キーを持っておらず、ユーザーらのメッセージを見ることは不可能だという。メルケル首相の米諜報機関による通話盗聴事件が、独ユーザーの猜疑心に輪をかけたかもしれない。
つまり、Facebookによる買収後にWhatsAppの競合のユーザー数が激増したのは、サーバがダウンしたからだけではなく、多くのユーザーにとって「Facebook=プライバシーの消失」を意味し、「Facebookが買ったWhatsAppなど使っていられない」ということなのだ。
実際に、ネットのあちらこちらで「Facebookの過去のプライバシー侵害を見ていると、近い将来、携帯の番号は自動的にFacebookのアカウントに変更され、携帯写真は自動的に携帯Facebookアカウントに収められ、携帯のGPSで所在地は世界中に開示されることになるだろうね」という皮肉たっぷりの書き込みや、「Telegram Messengerをダウンロードしたところ。190億ドル払ったことをザッカーバーグに後悔させてやる」という憎しみを顕わにした書き込みも複数見られた。
Facebookにとって、10代のユーザーが減ることより、こうしたイメージの方が問題だと思うのだが……。
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