オバマケア--大失敗したITプロジェクト(前編)

 過去3カ月近く、米国内を騒がせているのが、2014年から本格的に施行される医療改革保険法(オバマケア)だ。

 オバマケアの仕組みは、複数の保険会社が参加する「エクスチェンジ」と呼ばれる市場を設けて、自営業者を含む個人加入者や小規模事業者は、そこから保険を購入するというものだ。一部の州では州独自のエクスチェンジを開設している(連邦政府は、大半を州に任せたかったが、やりたがらない州政府が続出した)。

 米国では、日本のような公的医療保険はなく、たいていの人は勤務先を通じて民間の保険に入る。企業は保険会社と交渉してグループ保険を得るので、個人で加入するよりも内容のいい保険に安価で加入できる。そのため、失業した途端、保険料を払えず、保険に加入できない人たちが続出する。また個人で加入する場合、既往症があると保険に加入できない場合が多い。

 そうした理由で米国の無保険者は4700万人以上にのぼっており、皆保険を目指し、新制度では所得に応じ加入者には連邦政府が補助金を支給する。一方、保険に加入しない国民には、所得に応じ罰金が課される。勤務先を通じて保険に加入している大企業の社員には関係ないが、一部の大企業では、やはり補助金を提供し、社員にエクスチェンジでの保険購入を促している。

稼動しなかった保険加入サイト

Healthcare.gov
Healthcare.gov

 加入者らがオンラインで保険に加入できるよう、連邦政府は10月1日にHealthcare.govをオープンした。「アマゾンやカヤックのように簡単に比較購入できる」とオバマ大統領の鳴り物入りだった。

 ところが10月中旬に筆者がオンラインで加入しようとしたところ、サイトでアカウントは作成でき、確認のメールはすぐに来たものの、サイト内にはまったく入れず(サイトが稼動しない)、加入はできなかった。10月1日から毎日のように加入しようとアクセスしていた人も知っているが、10月中に加入できずに終わった。新たなプランに加入できず、今のプランのままでは保険料が倍になるという人もいる。1月から新たな保険を利用するには、12月23日までに加入しなければならない。

 オンラインで加入できたと思っても、保険会社に申込用紙が届いていないケースが1万5000件あったり、ある州では補助金の計算がすべて間違っていたという問題も発覚した。

 政府は、10~11月で加入者170万人を予測していたが、実際の加入者は36万人のみに終わった。稼動しないサイトはメディアで大々的に取り上げられ、来年の中間選挙への影響を心配し民主党内からも批判が出始めた。

 そこで、政府は、いったんサイトを閉鎖し、修復することにしたのだが、400以上の不具合を修正し、ハードをアップグレードして、11月末に再オープンした後も、解約しようとしてもできないなど不具合は続いている。

 筆者も、12月に入り再度挑戦したのだが、10月にアカウントを作ったときのパスワードが使えない。そこで、パスワードのリセットをしようとしたのだが、そのためのリンクは送られてくるものの、そこに飛んでもエラーメッセージが出るだけで、それ以上、先に進めない状態が続いた。

 申込時に社会保障番号を入力しなければならず(これを盗まれると非常に厄介なことになる)、それよりもセキュリティが心配だったので、申込はオンラインではなく電話で行った。しかし、どうもオペレーターは、電話で聞き取った情報を同じネットベースのシステムに入力しているようだった。加入後、プランを変えようと電話したところ、「変更のボタンを押しているのですが、先に進めません」という。これは、加入者らがサイトで遭遇しているのと同じ問題である。

 メディアで大々的に取り上げられたのは連邦政府のサイトだが、州政府のサイトでも問題が続出した。連邦政府のサイトよりひどい状態で、加入はすべて申込用紙郵送による州や、加入者全員が加入したと思っていたのとは違うプランに加入していたことが判明した州もある。

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