企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。
ネスレ日本株式会社の「ネスカフェアンバサダー」キャンペーンには、人の心を動かすストーリーがありました。
ネスカフェアンバサダーとは、ネスレ日本が家庭用コーヒーマシン「ネスカフェバリスタ」をオフィスに普及するため2012年9月から実施しているキャンペーンです。
まず「オフィス代表してネスカフェ製品を購入」して「同僚に商品を紹介」してくれる人を募集します。
その人たちを「ネスカフェアンバサダー」と名付けて、一定の条件を満たすとネスカフェバリスタをオフィスに無料貸出するという特典をもうけました。
アンバサダーは「職場にバリスタを設置」「定期的にアンケートに答える」「オフィスでコーヒーを楽しんでいる写真を投稿」「同僚からコーヒーの代金を集めて専用カートリッジを買う」など、の役割を果たします。
アンバサダーとは、本来「大使」「使節」といったような意味です。そのブランドに強い愛着を持ち、まわりの人たちやネットで強く口コミしてくれるような人たちのことを最近のマーケティング用語で「ブランドアンバサダー」と呼んでいます。
この「ネスカフェアンバサダー」キャンペーンも、ファンに商品を伝道してもらうことを目指して考案されたものです。
当初は試験的に小規模での実施でしたが、反響が大きかったので幅広く募集することに踏み切りました。
伝道役のアンバサダーは、1年あまりの間に10万人以上になり、大成功をおさめています。
ではなぜ、こんなにも反響があったのでしょう。
それはメーカーだけでなく、アンバサダーになる人にとっても相互にメリットが大きかったからです。
何よりまず、安価に気軽にオフィスでコーヒーが飲めるということが挙げられます。
コーヒーの自動販売機が設置されていないオフィスも多いし、お金が必要な場合がほとんどです。
スターバックス等のカフェでは300円以上、缶コーヒーやコンビニのコーヒーでも100円以上はします。また、買いに行くのも面倒です。
そんな時、このバリスタがあれば1杯約20円で気軽にコーヒーブレイクが楽しめるのです。
またアンバサダーになった人の多くは、会社の同僚から感謝され、いい気持ちになることができます。
コーヒーを通じて、職場のコミュニケーションが円滑になるケースも多いでしょう。
コーヒーマシンを通してオフィスにいろいろなストーリーが生まれるのです。
もちろん、メーカーにもメリットは大きいです。オフィスで飲む習慣がつくことによって、バリスタの自宅での購入を検討する人も新たに増えます。
アンケートに答えてもらうことによって、ユーザー調査をタダ同然で行なうことができます。
定期的にネスカフェ商品を購入してもらえるので売上もあがります。
何よりアンバサダーになってくれることで、ネスカフェの熱心なファンになり長期にわたって口コミ宣伝をしてくれる可能性が高まるのです。
さらにネスカフェアンバサダーのサイトでは、申し込みのハードルを下げて、インタラクティブに楽しめる仕組みも作られています。
例えば、「らくらく社内説得キット」では、ペラ2枚の書類をPDFを簡単にダウンロードできます。
導入する時に生まれる大きな3つの疑問に簡潔に答えてくれるのと同時に、既にオフィスで楽しんでいる人達の写真やオススメの言葉が載せられています。
アンバサダーになりたい人はこれをプリントアウトして、上司・同僚・関連セクションに渡すだけで、余計な説明の手間が省けるのです。
「アンバサダーVOICE」は、職場に設置されたバリスタを通してみんながコーヒーを楽しんでいる写真やコメントを投稿するコーナーです。
担当者が選ぶ「ナイス投稿」というページや、意見を交換する掲示板などもあり、アンバサダー同士が交流し盛り上がる仕組みも作られています。
このような様子を見た人は、自分もアンバサダーをやってみようという気持ちが盛り上がるでしょう。
みんなが「オフィスでコーヒーを楽しんでいる」というストーリーは、このキャンペーンの広報活動にも使えます。
このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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