この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、広告・マーケティング分野における“スマートフォンの今”をお伝えする。前回に続き、スマートフォン広告市場を支えるメディアを6つのジャンルに分けて考察したい。今回はソーシャルメディアだ。
現時点では一服した感もあるが、mixiが展開した「ソーシャルエキスパンドアド」。予約型のバナー広告は基本的に、クリエイティブをクリックするとキャンペーンページや商品紹介ページなどにリンクして終了するが、ソーシャルエキスパンドアドはそれだけでは終わらない。
たとえば、ある人がキャンペーンページに飛んで、そのキャンペーンに参加すると、「Aさんが○○キャンペーンに登録しました」といったニュースがmixiのフィードに流れる。その事実を友達が知るわけである。そこからソーシャルメディアらしいバイラル効果が生まれる。
さらに、バナー広告にリアルタイムに参加人数を表示することもできる。それを見て、興味を持った人がまた増える。つまり、最初に関心を持ってクリックした人が参加したことで、2次的に参加する人が増えていくという仕掛けだ。ファーストインプレッションに加えてソーシャルリーチが誘発されると、さらに広告効果は高まる。
この効果を生み出す企画やクリエイティブ力と、正しく効果を測定できるどうかが、ソーシャルメディアへの企画広告の出稿に際しては重要になってくる。
スマートフォン上のメディアには、ウェブブラウザ版とアプリ版がある場合もあり、トラフィックが分散されることもある。ソーシャルメディアの場合、たとえばmixiのコミュニティ機能など、人気のある機能やサービスをアプリとして切り出し、ユーザーの利便性を高めている。
各メディアとも従来はコンテンツを無料でユーザーに提供し、広告で収入を得るというビジネスモデルであった。それは現在も続いているが、それだけに留まらず、有料登録して情報を購入してもらうなど、ユーザー課金を伸ばす方法を模索している。そこで、人気のある機能やサービスに特化してアプリとして切り出し、ユーザーの利便性を高めているのだ。
ソーシャルメディアは、さまざな機能やサービスを追加することでポータル化を推進し、そして巨大化していった。一方で、サイトが複雑化するという課題もできた。そこでアプリという手法を使って、サービスを切り出すことで使い勝手を高めたいというニーズが生まれたのだ。では、切り出されたアプリをどうマネタイズすればいいのか。
ここで改めて言えることは、トラフィックの分散が進むことを踏まえれば、バナー広告に出稿するモデルの広告は、ますますアドネットワークなどの運用型の活用で効率的になっていき、人の手を介さないビジネスモデルへと変わっていく。そのため、予約型といわれる広告手法では、ユーザーにコンテンツの一部として受け入れられるような広告手法により力を入れていく必要があるのだ。
Facebookでも、スマートフォン向けの広告商品が売り出され始めた。現在の主力商品に、アプリインストールアドというものがある。これは、スマートフォンでFacebookにアクセスした際に、ユーザーのフィードにお勧めアプリなどを挟めるというものだ。世代や性別などの条件で、ユーザーのセグメント分けもできる。IP/CP、アプリベンダーが主要なクライアントになる。Facebookに関しては、シンプルな広告出稿モデルが主流であり、現在はこのアプリインストールアドに対する需要が高まっている。
TwitterはPC広告が中心だが、1原稿でマルチデバイスへの配信が可能だ。このような、デバイスを問わない配信方法が伸びてきている。デバイス別のトラフィックをみても、PCは横ばい(やや減少)、スマートフォンは増加、フィーチャーフォンは減少(下げ止まり感もある)といったメディアが多い。Facebookでは、スマートフォンの配信率が最も高まってきている。1つの原稿でマルチ配信が可能な利便性と、相反するがそれぞれのデバイスに適した広告手法の必要性、そして広告測定や検証などの運用ノウハウが問われる。
(執筆:D2C レップ事業本部 メディア企画部 部長 澤宏明)
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