唯一の制約は、現時点では、AppleがTouch IDを使用できる場面を限定していることだろう。指紋のスキャンは、パスコードの入力の代わりに使えるし、「App Store」や「iTunes」で何かを購入する際に毎回必要になるパスワード入力の代わりにも使用できる。しかし、今のところTouch IDが使えるのはそれだけだ。さまざまなクラウドサービスのパスワードの代わりには使用できないし、クレジットカードともリンクできず、「Fandango」で映画のチケットを購入するのにも使えない。
実際、Touch IDはパスコードを完全に置き換えることはできないので、端末をアンロックするためのパスコードは忘れない方がいい。iPhoneの再起動時、電源の投入時、あるいは、48時間以上使用しなかった時には、指紋認証が使用可能になる前にパスコードの入力を求められる。これは、指紋を盗んだ相手に対する対策としては有用かもしれないが、1週間ほど使ってみると、やや奇妙に感じられた。iPhone 5sが、いつパスコードを聞いてくるか、まったく予想できないのだ。
子供がボタンを押しまくって、スマートフォンのメモリが消えてしまう心配をしたことはあるだろうか?もうその心配はない。Touch IDは、3回指紋認証に失敗するとパスコードを尋ねるようになっており、5回失敗すると、パスコードの入力が必ず必要になる。さらに、「パスコード入力に10回失敗したら内容を消去」設定をオンにした場合でさえ、パスコードの入力には10回の猶予がある。
この機能で、どのくらい時間が節約できるのだろうか?この手順では、「スワイプしてアンロックする」動作を飛ばすことができるので、多少は時間を節約できる。また、パスコードを入力するための数秒も必要なくなる。しかし、筆者が一番有り難いと思ったのは、日中に素早くスマートフォンを使う必要が生じたときだ。
筆者は、Touch IDの指紋スキャン機能にはもっと可能性があると考えており、サードパーティーアプリのパスワード入力の代わりのほか、支払い手段やフライトへのチェックインにも使えるようになってほしいと思っている。これはモバイル電子マネーのキラーアプリになり得る技術であり、「iOS 6」から提供されている、Appleの(あまり活用されていない)「Passbook」アプリとの相性もよいはずだ。しかし、こういった追加機能は、すぐには提供されそうにない。Appleは今のところ、Touch IDとユーザーの指紋(Appleによれば、指紋は画像としてではなく、数学的データとして暗号化される)をiPhone 5sのA7チップ専用のものとして、サードパーティーアプリやクラウドサービスからは利用できないようにしている。これはセキュリティの保護にはプラスかもしれないが、Touch IDがすべてのパスワードを覚えておいてくれる救世主や、クレジットカードの代わりにはならないことを意味している。
とは言っても、筆者はTouch IDがいずれすべてのApple製デバイスに組み込まれるようになると予想している。次はiPadで、そのうちにMacにも広がるだろう。この使いやすさを考えれば、そうしない理由はない。
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