Microsoftの「Bing」には、Appleの「Siri」や「Google Now」に相当するものはないが、それでもMicrosoftの幹部らは、そうした最も人気のある2つのデジタルパーソナルアシスタントの価値を低いと考えることをやめたりはしない。
Bing担当シニアディレクターのStefan Weitz氏は、「SiriとGoogle Nowは世界をかなり表面的にしか理解していない」と語る。そうした音声コントロールによるインタラクティブなサービスは、レストランや映画を探したり、自動車のナビゲーションに使ったりするのには良いが、新しいハードドライブを買いたい場合やエリー湖の外周の長さを知りたい場合には、役に立たなくなる。
AppleのSiriは、Yelpや「Wolfram Alpha」といった数多くの情報源やアプリを使って、基本的な検索に答える、会議をスケジューリングする、ツイートを送信するなどのタスクをこなしている。Google NowはSiriよりも1歩進んでいる。ユーザーの許可があれば、Google Nowはユーザーの電子メールやカレンダー、そのほかのアクティビティを検索することで、職場から家まで車でどれほどの時間がかかるかといったユーザーの情報ニーズを先回りして知らせたり、予約した飛行機に変更があった場合に通知したりする。
Weitz氏は、Microsoft版のデジタルアシスタントをまだ秘密にしておき、現在はAppleとGoogleにこの分野を独占させておいても構わないと考えているようだ。将来のある時点で、MicrosoftがSiriとGoogle Nowを一気に追い越すことを同氏は期待している。
「製品の出荷スケジュールについて、われわれは社内で協議してきた。今の時点でSiriやGoogle Nowのようなものを市場に出すことは可能だが、それは最高水準のものにはならない。制約が多すぎて、現時点ではエージェントにはなりえない。われわれは進化したものではなく革新的なものを作り出すまで、製品を世に出すことはない」(Weitz氏)
Weitz氏にとっての革新的な製品というのは「Bingの内部に地球を物理的に再現する」ことを試みることだ。つまり、地球をすみずみまで地図化し、ボックスティッシュやJustin Bieberから、エンパイアステートビルやリベリアの首都モンロビアまで、あらゆるものを含むセマンティックモデルを作るということだ。
最高水準のBingデジタルアシスタントを作るというMicrosoftの取り組みの中心にあるのが「Satori」だ。これは、過去3年半で処理された10億以上のオブジェクトを含む知識レポジトリだとWeitz氏は言う。Googleの「Knowledge Graph」のように、Satoriはエンティティや関連データ、そしてそれらの関係をカタログ化している。Knowledge GraphとSatoriはどちらも、ウェブをクロールし、「Freebase」(Googleが所有している)やWikipediaのような既存のデータソースを利用することで、リンクのページを表示するのではなく、質問にミリ秒以内で答えるのに役立つ、意味的に豊富なコード化された情報レポジトリを構築している。
例えばSatoriは180万本のワインをカタログ化している。「1本のワインには、色、醸造年、ぶどうの品種、産地の降水量など、いくつもの特性がある。特性の数は1万にもなり、それらはウェブ上のあらゆるところにある」とWeitz氏は言う。Satoriはこうしたさまざまな情報を1カ所に集めて再構築している。
「Satoriは毎日動いて、より多くを学んでいる自己学習システムだ。毎日DVDで2万8000枚分のコンテンツを追加している。過去数年でわれわれが集めたデータの量は驚くばかりだ。金星まで線を引いても、まだ7兆ピクセルも残るほどの量だ」(Weitz氏)
Satoriの計算エンジンは、Microsoftのコンピューティングクラウド内にある5万以上のノードによってサポートされている。
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