5年間で何と大きく変わったことだろうか。
米国時間7月10日に開設5周年を迎えたAppleの「App Store」には、自慢できることがたくさんある。App Storeは過去5年間にわたって、スマートフォンがスイスアーミーナイフのようにさまざまな機能を備えるのに役立ってきた。それによってスマートフォンは、電話をかけたりインターネットをブラウズしたりする以上のことができるようになった。App Storeは最初のアプリストアではないが、その後のモバイルアプリケーション販売の基準を打ち立てた。その最大の功績は、アプリを誰でも手に入れられるようにしたことだ。
Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏は7月10日の記念日に先だって、6月に開催された同社の年次開発者カンファレンスでApp Storeの開設について「App Storeのようなものはそれ以前にはなかった。そしてそれは世界を根本的に変えた」と語っている。
しかし、App Storeが故Steve Jobs氏によって最初に紹介されて以来、状況は変わっている。「Google Play」は利用できるアプリの純粋な数の多さではApp Storeを上回っている。AppleのApp Storeは常に最も人気のある有名アプリを販売してきたものの、この先5年間の成功は、App Storeが大きなアプリと小さなアプリの両方をいかに育てるかにかかっているだろう。
Gartnerのコンシューマーテクノロジ担当のリサーチディレクターであるBrian Blau氏は、「App Storeは、人々が自分のほしいコンテンツを探すというより、人気度コンテストの場になってしまっている」と語る。同氏はさらに、ユーザーが目にするのは最も人気のある上位数千件のアプリであるため、アプリはランキング入りするか、スタッフのおすすめアプリとして宣伝してもらえるように競わなければならないと付け加えた。それ故に、ブランドの認知度やマーケティング力のないアプリはすべて、ユーザーの目に触れる機会を奪われてしまう。
現在、Appleには声高にアピールできる素晴らしい数字がたくさんある。App Storeでは、90万件以上のプログラムを利用でき、アプリのダウンロード回数は500億を超えている。Appleは、同社が開発者に100億ドルを支払っていることを自慢しており、それは、たとえ売上額の30%がAppleに渡るとしても、同社と働くことは利益につながる証拠だとしている。
Appleは開発者にとっての最大の収入源となることで、見事に開発者を集めてきたとBlau氏は指摘する。
その結果、ライバルのサムスンが最上位スマートフォンファミリである「GALAXY S」で大きく前進している中でも、「iPhone」の販売権はいまだにスマートフォン業界がうらやむものになっている。米国では、iPhoneの販売数がいまだに首位を占めており、それは少なくとも部分的には、アプリの品ぞろえの幅広さによるものだ。
ともすると忘れられがちだが、最初のアプリストアを立ち上げたのはAppleではない。App Store以前にも、PalmやMicrosoft、Salesforce.comの「AppExchange」といった同様のストアがあった。Jobs氏はSalesforce.comの創設者でCEOのMarc Benioff氏と親しかったが、Benioff氏は当時既に「appstore」のドメインと商標を取得していた。AppleがApp Storeを立ち上げることになった時にBenioff氏は、数年前にJobs氏が自分のチームにアドバイスしてくれたことに対する感謝のしるしとして、そのドメインと商標をJobs氏に贈った。
しかしAppleはApp Storeを使って新しいことをした。App Storeを誰にでも利用できるようにしたのである。アプリを1カ所のシンプルなストアで提供し、プログラムのダウンロードと実行を簡単にしたことによって、Appleは新たな市場を誘発した。確かに「BlackBerry」や「Windows Mobile」搭載の携帯電話でも独自のアプリをダウンロードできたが、ユーザーは、アプリを求めていくつものサイトを探し回る必要があったし、アプリがうまく動くという保証もなかった。
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