しかしAppleは承認するアプリの種類を厳しく制御し、推奨アプリを提示することさえした。ほかのモバイルプラットフォーム上でプログラムをダウンロードする際の面倒な事態に悩まされたくないスマートフォンユーザーにとって、App Storeは安全で便利な場所だった。
IDCのアプリケーション開発ソフトウェア部門でディレクターを務めるアナリストのAl Hilwa氏は、既に音楽向けにトラッキングコンテンツを提供し、トランザクションの処理を行っていた「iTunes」にアプリストアを統合するというAppleのアイデアは、iPhoneの成功に貢献した天才的発想の1つだったとしている。プラットフォームをアプリ開発者向けに公開したことも素晴らしい戦略だったと同氏は言う。「iOS」が今でも開発者の間で人気があるのは、単に利益になるからというだけではなく、1種類のスマートフォンのために開発を行えるというシンプルさが理由である。
それ以前のスマートフォン向けストアには基本的なゲームやビジネスアプリがそろっていたが、AppleのApp Storeはあらゆる種類のプログラムに門戸を開いた。ユーザーが自分のスマートフォンについて今までにないような新しい使い方を知りたがるなかで、取るに足りないようなアプリがちょっとした額を突如として稼ぐようになった。Rovioの「Angry Birds」のように驚異的な存在となったゲームもあり、同シリーズはあらゆるモバイルプラットフォームにとって必須のものとされるようになった。
「App Storeは『Shazam』が成功した真の理由だ」と語るのは、音楽認識アプリ「Shazam」を開発したメーカーのCEOであるRich Riley氏だ。「その理由は、App Storeがこのアプリの検索やダウンロード、アップデートを簡単にしているところが大きい」(Riley氏)
「Pandora」はApp Storeでのダウンロード数でFacebookに続く第2位を占める無料アプリだが、同社の軌道が大きく変わったのはAppleのおかげだという。App Store開設前の3年間、Pandoraはデスクトップに限定されていて、「より大きなビジョンの影にすぎなかった」と最高技術責任者(CTO)のTom Conrad氏は語る。同氏によれば、App Storeが開設されたその日から、Pandoraはまさにこの方法で使われるためのものだと気付いたという。
App Storeの成功はそれを模倣するサイトを生み出した。その中には成功したサイトもあったが(Google Play)、静かに消え去ったものもあった(PalmやwebOS)。「Windows Phone」には独自の「Marketplace」があり、BlackBerryには「App World」がある。
Appleは長い間、iOS端末で利用できるアプリの多さを自慢してきたが、App Storeはもはや最大のアプリストアを名乗ることはできない。Google Playは97万5000件のアプリを誇っており、App Storeにわずかな差で勝っている。Google Playのダウンロード回数も500億を超えている。
Googleの「Android」プラットフォームが積極的に採用され、宣伝されたおかげで、Google Playが爆発的に成長したのは驚くことではない。Androidは、iPhone販売の独占契約を結ばなかった通信事業者に広く受け入れられた。米国では、AT&TがiPhoneによってスマートフォン販売を支配していたとき、Verizon Wireless、T-Mobile、Sprintの各社は、Androidと、Google Playの前身である「Android Marketplace」を支持した。
市場データによれば、AndroidはAppleのiOSを大きく引き離して、世界第1位のスマートフォンOSであるという。
Androidの爆発的な拡大と、複数のスマートフォンメーカーに制限なく対応している点は、高い代償を伴っている。このプラットフォームが持つ断片的な性質により、対応アプリの開発はより複雑で、費用がかかるものになる場合がある。ほとんどのアプリがまずApp Storeで発売され、その後でAndroidに対応している理由の1つはこの点である。
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