アーティスト視点で考える次世代のオンラインコミュニティ講座

矢野悠貴(ループス・コミュニケーションズ)2013年07月04日 07時30分

 連載第1回目に続く、2回目の今回は、アーティストのオンラインコミュニティについて考えてみたい。アーティストのこれまでのデジタル戦略を見ると、オフィシャルサイト、ブログ、ファンクラブがその中心であった。アーティストとしての活動情報が集約される場所としてオフィシャルサイトが、また、プラベートも含めた本人の日々の様子をアップする場としてブログ(オフィシャルサイトに内包される場合も多い)があり、ロイヤリティの高い一部のファンに向けて、特典を提供する場としてファンクラブを設置していた。

 さまざまなソーシャルメディアが浸透する中で、アーティストもTwitterアカウント、Facebookページ、YouTubeチャンネル、そしてUSTREAMの活用が一般化している。しかし、LINE、Google+、PinterestVineViddyというように次々と新サービスが登場するメディア環境の中では、各メディアの活用目的やKPI(重要業績評価指標)が明確に定義されていないと、アカウントだけが増え、運用の負担が増加し、各メディアの更新頻度やコンテンツの質が低下していくという悪循環に陥りかねない。また、オフィシャルサイトの存在意義を見失うといったことも考えられる。



 こうした状況の中で、アーティストのデジタル戦略の次なる柱は、オフィシャルサイトとファンクラブの再構築を含めた、オンライン上におけるコミュニティの形成である。オフィシャルなコミュニティをベースとしたファンとの継続的なコミュニケーションの設計がその軸となっていくだろう。このコミュニティは、Facebookページやmixi内のコミュニティそれ自体とは異なり、各ソーシャルメディアアカウントや、オフィシャルサイト、ファンクラブなども含めて形成される、より大きな概念をイメージしてもらいたい。

 アーティストにとってのコミュニティの設計を考えた際には、以下の3つの要素が欠かせない。

  1. 階層化の設計
  2. 参加させる設計
  3. メッセージの設計

階層化されたコミュニティの全体像

 階層化とは、濃度の異なるそれぞれのファンに、適切なモチベーションとコンテンツを提供するための仕組みだ。これまでのように、万人に向けられたオフィシャルサイトとコアファン向けのファンクラブといった単純な2層構造ではなく、Facebook、Twitter、YouTubeといった、ユーザーが誰もがフリーでそのコンテンツに触れられる場、そして会員登録が必要となる場、さらにプレミアムなコンテンツが提供される場、というようにコミュニティを複数の階層に分けてとらえることが必要だ。

 Twitter、Facebook、YouTubeといったソーシャルメディアは、フリーのコンテンツを通じて、より多くの潜在的なファン層にアーティストの世界観を体験してもらうための機会を創出する。ここは、その先に生まれる収益への投資の場ととらえる必要があり、コンテンツは拡散性などが鍵となる。

 その1つ上には、会員制のプラットフォームがある。有料、無料はアーティストによって分かれるが、ソーシャルアカウントやメールアドレスによる認証を要するページが想定される。ユーザーにとって1つハードルが存在する分、提供されるコンテンツはリッチなものとなるだろう。フル尺の音源や映像、またはイベント招待などの特典のほかに、ユーザー自身がさまざまな形で「参加する」機会が提供されることが大切だ。

 このエリアを設計するにあたっては、既存のオフィシャルサイトおよびファンクラブを再構築する必要がある。例えば、アーティストMIYAVIは、さまざまなソーシャルメディアアカウントを展開した上で、そのハブとしてオフィシャルサイトを置き、そこから会員制のエリアへ誘導をしている。通常、オフィシャルサイトにはトップにディスコグラフィーやバイオグラフィーといったメニューがあり、そこから詳細ページに遷移するが、MIYAVIのページでは、詳細ページに遷移するのは一部で、各コンテンツをより深く閲覧したい場合には、会員登録が必要となる。よりロイヤリティの高いファンを1つ上の階層へ導き、「チャット世界会議」など独自の体験を提供している。

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