デジタルマーケティングの最新動向を紹介するイベント「Adobe Digital Marketing Forum 2013」のジェネラルセッションで「解析とソーシャルは相いれるのか?」とのタイトルで議論が交わされた。
議論に参加したのは、ループス・コミュニケーションズ 代表取締役の斉藤徹氏とサイバーエージェント アメーバ事業部 セントラルデータコンサルティング室 アナリスト兼eVar7代表の小川卓氏。アドビシステムズ ディレクターの遠藤悟郎氏が司会進行を務めた。
ウェブマーケティングの世界では、コントロールできることが前提。その一方で、ソーシャルメディアというコントロールできない新しいメディアが登場してきている。これを、どのように企業コミュニケーションとして取り入れていくのかを考察した。
遠藤氏は冒頭、「解析とソーシャルメディアは本質的に何が異なっていて、共通の課題は何か。ソーシャルメディアは結構、奥深いものであるとみられるようになってきており、経営改革にも適用できるのではと考えられるようになった」と話し、両氏を「解析側の小川氏、ソーシャル側の斉藤氏」と紹介し「最近力を入れていること。特に関心があること」を聞いた。
小川氏は「最近では、分析のためのツール類が進化し、データもそろってきた。これまでは、分析についてツールの限界があることを言い訳にして(積極さを欠いて)いた面があったが、今や、やろうと思えば、さまざまなことができる。これらをどう活用していけるのか。また、各部署がサイロ化し、これを打破して連携すべきとの見方があるか、それは本当なのか。サイロを破壊しなくても、つながる方法はあるのでは」と述べた。
斉藤氏は「企業としてはソーシャルメディアを活用するだけではなく、組織や経営の在り方が問われている面もある。ソーシャルメディアの領域では、生活者がいわば広告塔になっている。彼らはある企業のことを好ましく思えば、ごく自然に推薦する。ソーシャルメディアからはエンドユーザーからさまざまなレスポンスが来る。これらを下手に扱えば、炎上することになる。企業側からのリアルタイムのレスポンスが今、求められている。顧客の要望と上司からの指示が正反対ということもありうる。指示を待っているのではなく、自律的な行動が重要になってくる」と答えた。
小川氏は「当社では、ソーシャルメディアユーザー向けにゲームアプリを出しており、数多くのコメントが寄せられる。もちろん、これらの声に真摯に対応していくべきなのだが、コメントの中には、われわれのビジネスの観点からすれば、相反するものも含まれている。容認できるものとそうでないものがあり、その線引きをどうするかは、一つの課題だ」と指摘した。
これに対し、斉藤氏は「エンドユーザーの発言をすべて受け入れるというのは正解だとは言えない。製品の哲学をきちんと定義し、十分に理解を得ながら、企業は製品やサービスを提供していくべき。エンドユーザー側に『このサービスは最適ではないか』あるいは『あのサービスは適していないのでは』というように提案していけばよい」と語った。
「私が本を執筆した際、一部を公開し、2日で1章分くらい発売前に読めるようにして『できるだけ多くの意見がほしい。すばらしいコメントがあれば、採用したい』と訴えたところ、多くのコメントが寄せられ、およそ5割ほどは優れたものだった。半分くらいは採用しなかったのだが、炎上するようなことはなかった。誠意あるコミュニケーションをしていれば、問題は起きない。中途半端な対応が最もいけない」(斉藤氏)
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