組織の在り方について、小川氏は「それぞれの担当部署は別々に動いているわけで、サイロ化してはいる。たとえば、テレビCMを展開する場合、複数の部署が関連することもあり、そういうきっかけがあれば、部署間のコミュニケーションが生じ、つながりができる可能性はある」とした。
斉藤氏は「われわれは、企業内ソーシャルメディアの“Yammer”を使っている。重要なのは、できるだけ多くの部門で情報を共有し、共通の価値観や理想像をもつことだ。また、現場への権限委譲を進めることが肝要だ。ここで必要なのはリーダーシップだ。いくら権限委譲しても、その場にリーダーシップがなければ意味がない。経営層は、部下をコントロールするのではなく、支援、エンパワーしていくことが望ましい」と説明した。
小川氏は、キャンペーンや広告などの効果測定について、テレビCMの例を挙げ、CMの放映時間、放映していない時間、それぞれのアメーバの会員獲得数などを比較し、「効果のあった番組、なかった番組などが如実にわかる」として、「CMの効果はできる範囲で可視化できる」と話す。
しかし、ソーシャルメディアはテレビCMと同じようにはいかない。斉藤氏は「たとえば、Facebookの『いいね!』コントロールすることなどできない。そのあたりの差異を認識しておくべき」とした。
世の中は突発的なことが起こるのが常だといえる。不測の事態の影響で大きな動きを見せるのがソーシャルメディアだ。斉藤氏は、思わぬ出来事とソーシャルメディアという観点で、クッキー「Oreo」の事例を紹介した。
今年2月、米国のプロアメリカンフットボールの頂上決戦であるSuper Bowlの最中、突然の停電で試合は三十数分間中断した。その時、OreoはTwitter公式アカウントに「You can still dunk in the dark」(暗い中でも“ダンク(クッキーをミルクなどに浸す)”はできる)との画像つきの広告が掲載された。これは大変な好評を得て、およそ1万6000に及ぶリツイートがあった。
斉藤氏によれば、Oreoは緊急時に10分以内で対応できる、コピーライターやソーシャルメディア担当者からなる15人ほどのチームを作っていたのだという。斉藤氏は「これはチームの勝利だ。ハプニングはチャンスでもある」と指摘、ソーシャルメディアのリアルタイム性を活かすことの重要性を強調した。
小川氏は「これまでは、過去のデータをみて、未来の意思決定のための判断やトレンドの把握をしていたが、ソーシャルメディアの場合、事実上、過去のデータはない。ソーシャルメディアは今現在の、リアルタイムのデータがわかるものだ。ここは大きな違いだ」と指摘。斉藤氏は「ソーシャルメディアは分析できても、再現はしにくい。相反するものの組み合わせは重要だ」と述べた。
小川氏は「ソーシャルメディアと解析は相いれるものだ。エンドユーザーから見れば関係ない。分析できるかどうかというのは企業側の論理だ。ソーシャルメディアはデータとしては追いかけるべきだが、コントロールはできない。そこから得られたものを製品やサービスに反映させることが可能だ。そのような施策の効果もまた、ソーシャルメディアで見ることができる」とソーシャルメディアの活用法を提示した。
斉藤氏は「今までの組織やマーケティングチームの考え方は、ソーシャルメディアと異なる点が多い。これらの組み合わせは、かなり大きなテーマとなる。Oreoみたいなことができるようになるのが望ましい。何かあった時に、瞬時の判断で対応できるチームの育成をしていくべき」と話し、組織の俊敏性の重要さを強調した。
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