朝日新聞社とマサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボは6月3日、メディアの未来像をテーマとしたシンポジウム「メディアが未来にできること」を開催した。
冒頭に登壇した朝日新聞社 代表取締役社長の木村伊量氏は、ITの劇的な発達により、産業からコミュニケーションの様相までが一変したと説明。マスメディアに情報が集中する時代からソーシャルメディアが力を持ち、誰もがメディアになる時代に変化していく中で、マスメディア自体にも変化が必要だとした。
同社では2011年にこれまでの「asahi.com」を「朝日新聞デジタル」としてリニューアル。2013年5月には「ハフィントン・ポスト」日本版を開始。さらには6月末に読者参加型のメディアラボも開始するという。
朝日新聞社では、これら一連の取り組みや今回のシンポジウムなどを通じ、テクノロジーによってこれからのメディアの変化について議論する「未来メディアプロジェクト」を進めている。「テクノロジーによってメディアはどう変わっていくのか、社会はどのように変化していくのか。私自身もみなさんとともに考えていきたい」(木村氏)
木村氏に紹介される形で登壇したMITメディアラボ シビック・ジャーナリズム研究者のイーサン・ザッカーマン氏は、「ソーシャルメディアが社会に与えるインパクト」と題して基調講演を行った。
ザッカーマン氏は、これまでマスメディア、ジャーナリストが発信していたニュースが、「Civic Media(市民メディア)」を通じて発信し始めていると説明。市民がメディアを作っていく例として、「We the People」について紹介した。
We the Peopleは、米国政府が2008年に立ち上げたプラットフォーム。国民から政府へ、さまざまな提言や請願ができるというもの。これまで540万人が参加しており、10万人以上の同意が集まれば、政府がその提言や請願に対して回答をしている。すでに就労ビザに関わる問題に対して法律の改正を進めるという回答がなされているほか、映画「スターウォーズ」に登場する「デススター」を作って欲しいというジョークのような誓願にも、ウイットに富んだ回答がなされたという。
請願というのは、古くは中国の明朝までにさかのぼる政治との関わり方だが、今、市民の発信について、興味深い変化が起こっているとザッカーマン氏は説明する。
19世紀は市民が自身のコミュニティの代表者として政府に入り、1対1の対話で問題を解決する時代だった。それが20世紀に入り、マスメディアを通じて政府が情報を発信し、これまでのような対話でなく、放送を通じた一方的な「発信」をするようになった。そこで市民は代表者を選び、政府を動かして問題を解決してきた(代表制民主主義)。それが21世紀にはまた変化している。世界中の人とネット課題を報告し、協力して解決策を生み出すようになっているという。
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