“ソーシャルニュース”がアジア初で進出--ハフィントン・ポスト日本版が始動

岩本有平 (編集部)2013年05月07日 16時41分

 ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンは5月7日、「THE HUFFINGTON POST」の日本版となる「THE HUFFINGTON POST in association with THE ASAHI SHIMBUN(ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン)」を公開した。

 THE HUFFINGTON POSTは2005年に米国で誕生したオンラインメディア。ニュースや特集記事、エンターテインメント情報に加えて、読者が意見交換や対話を行う機能を備える「ソーシャルニュース」を標ぼうする。米国での月間訪問者数は4600万ユーザー、投稿件数は800万件。寄稿するブロガーは3万人に上る。現在は米国のほか、イギリスやカナダ、フランス、スペイン、イタリア版を展開している。9月にはドイツでもサービスを展開する予定。2012年4月には、ピューリッツァー賞の米国国内報道部門も受賞した。

 日本版では、編集部およびブロガーによる記事と、ソーシャルコメント機能を提供。まずは政治、経済、国際、社会の4つの分野をカバーする。運営元となるザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンは、ザ・ハフィントン・ポスト・メディアグループと朝日新聞社との合弁会社で、運営チームは約10名体制となる。

 日本版公開にあわせて開催された発表会には、THE HUFFINGTON POSTの創業者であり、現在ザ・ハフィントン・ポスト・メディアグループ プレジデント兼編集長を務めるアリアナ・ハフィントン氏が登壇。「アジアで最初に日本で展開できることは嬉しい。朝日新聞社はベストなパートナーであると共に友人である」と語った。

 ハフィントン氏は、政治面ではアベノミクスによる変化が世界に問われる中、「もう一度日本がミラクルを起こそうと言うとき、何が行われるか見ていきたい」とコメント。また、政治や経済だけでなく、健康分野へも注力したいとした。「この分野こそ日本が非常に伝統を持っているところ。京都で座禅も体験したが、日本こそ精神面で貢献できる位置にある。しかし逆説的に日本は人口減少や女性の役割、ワークライフバランス、自殺も問題になっている。我々もレポートし、アグリゲーションし、プラットフォームとなって対話を促していきたい」(ハフィントン氏)

 だが、実際にブロガーや市井の人々は果たして自らの意見をメディア上に出していくのか? ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパンの編集長を務める松浦茂樹氏は、同じような質問をたびたび受けてきたとした上で、「確かに今は難しい。しかし、ユーザーのポジティブな声を集めて、皆さんにお返しできれば」(松浦氏)と語った。

 読者のターゲットとするのは、団塊世代ジュニア。「層が厚いにも関わらず声が聞こえていないのではないか。10年後、社会的責務が最も大きくなる時期に向けて声を集約していかないといけない」(松浦氏)。現在日本版にはブロガーや政治家のブログが多く見られるが、ハフィントン氏は、「より広い対話を持ちたい」と説明。「有名人だけでなく、学生や役者など、あらゆる人たちが発信する場を作りたい。日本人はあまり意見を出さないという声があるが、意見だけでなくストーリーを語って頂きたい」(ハフィントン氏)とした。

 サイトに寄せられるコメントについては、人力、システムを組み合わせて、ネガティブな意見、誹謗中傷などを公開しないようにしていくことで、ポジティブな議論ができる土壌を作るという。日本版の編集権については、「基本的に朝日新聞とハフィントンは独立している。万が一問題があれば編集マネジメント委員会を開くが、一般原則では松浦編集長がすべての責任を負う」(ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン代表取締役の西村陽一氏)という。

 朝日新聞社 代表取締役社長の木村伊量氏は、これまで同社が134年メディアを運営し、その中で他紙に先駆けてオピニオン面を立ち上げたという強みを訴える。だが一方で新聞が「供給者」の面が強い媒体だったとし、読者参加型のウェブメディアによって新たな公共益、言論文化を作っていきたいとした。

 2013年で8年を迎えるTHE HUFFINGTON POST。ザ・ハフィントン・ポスト・メディアグループ CEOのジミー・メイマン氏は、1年半ほど前から海外展開を検討してきたと説明。まずは欧州への進出、いずれはアジアへと考えていたが、「こんなに短い期間で達成できるとは思わなかった。日本がメディアの変化を受け入れているからではないか」と語った。また、アジア進出第1弾として日本を選んだ理由については、新聞のマーケットが大きいためと説明。広告ビジネスにも期待しているという。

 またメイマン氏によると、海外版はフランスを筆頭にユーザー数、売上の両面で成功しているという。同社では各国でサービス開始から2年後に損益分岐点を超えることを目標としているという。


左からザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン CEOの小野高道氏、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン代表取締役の西村陽一氏、ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン 編集長の松浦茂樹氏、ザ・ハフィントン・ポスト・メディアグループ プレジデント兼編集長のアリアナ・ハフィントン氏、朝日新聞社 代表取締役社長の木村伊量氏、ザ・ハフィントン・ポスト・メディアグループ CEOのジミー・メイマン氏

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