Ray Kurzweil氏は、ナノボットが人類を不老不死にし、コンピュータの急激な進化によって、未来が予見できなくなる「技術的特異点」というビジョンを持っているが、これは良い考えではない。
意外だが、このビジョンは伊藤穰一氏の意見とはおそらく正反対になる。伊藤氏はハイテク分野の投資家で、マサチューセッツ工科大学(MIT)Media Labの所長も務めており、技術的特異点を当然支持していると思われていた。何しろ、MIT Media Labは今日の技術革新の中心になることを目指しているからだ。
スイスのダボスで開催されたWorld Economic Forumで講演を行った伊藤氏は技術的特異点について、誤った優先事項を最重要視してしまっていると思う、と述べた。
伊藤氏は、「私は技術的特異点派の人たちとは対極の立場に立っている。不老不死が良いことだとは思わない」と述べた。効率の最大化について考える人々は、「生態学やソーシャルネットワークの影響について考えていない。将来的に、われわれが行うあらゆる科学的発明は少なくとも中立であるべき」で、できれば肯定的なものであるべきだ。
「不老不死を取り入れるなら、それが仕組みにどのような影響を及ぼすかを考えなければならない。Media Labの設計原理は、世界をより効率的にすることではなく、仕組みをより弾力的かつ強力にすることだ」(伊藤氏)
伊藤氏は、教育制度の根本的な変革も求めた。
同氏は、「現在は、子供たちを大量生産社会の従順な一員にするための教育を行っている」と話す。「しかし、今後オートメーション化がさらに増えていくことを考えると」、子供たちが遊び回ったり、探検をしたり、お互いに教え合ったりする幼稚園のように、「人々の創造力をより豊かにした方がいい」
現在のテストは、現実とは全く関係ない、コンピュータの存在しないテスト環境で子供たちを評価している。
現在は、「インターネットで調べ、友達に質問することができる」と伊藤氏は述べた。「カンニングは実は特徴の1つだ。大人としての成功は、物事を成し遂げようとするときに、いかにうまくまわりの人の助けを得られるかというところにある」(同氏)。今日の学校やテストでは、「これらすべてのことが、評価の対象になっていない」
MIT Media Labは、もっと体系化されていないアプローチを好む。伊藤氏は、「我が校の学生と学部は、自分のやりたいことはなんでも探求できる。われわれは、それを放任している。許可を求めたり、提案書を書いたりしないのなら、革新のコストは非常に低い」と述べた。
学生たちは午前中、さまざまなアイデアについて話し合うことができる。特に3Dプリンタの実用性が向上したこともあり、「彼らは午後には、既にプロトタイプを完成させている」と同氏は述べた。
伊藤氏は、それらのプリンタがいかにして製造を変えるか、ということに対して壮大なビジョンを抱いている。同氏は、「われわれは中央ではなく、あらゆるところで製造を行うようになる。すべての人がデザイナーになるだろう」と予測した。
伊藤氏はまた、都市では何が実現できるかを人々が再考する際、テクノロジが助けになるはずだ、と述べた。人々がオンデマンドでバスを呼び出せるようになれば、あらかじめバス停を設置する代わりに、オンデマンドでバス停を作り出せるようにする必要がある。人々が通勤通学用レンタル自転車を需要の多い地域で返却すれば、より安価にその自転車を利用できるようになるはずだ。
「われわれは、ソフトウェアの視点から都市を見つめ、その周辺にハードウェアを構築しようとしている」(伊藤氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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