キヤノンのコンパクトデジタルカメラの「PowerShot N」が人気を博している。これまで3回行われた同社直販サイトによる予約販売はすべて即日完売。5月15日には4回目の予約販売が行われるが、この成り行きが業界内から注目されている。
人気の背景には、ユニークな製品コンセプトとともに、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)としては初めてともいえるマーケティング手法の存在がある。果たして、キヤノンMJは、PowerShot Nでどんな仕掛けを行ったのか。
PowerShot Nは、これまでのデジタルカメラとは一線を画したコンセプトによって開発された製品だ。
本体は手のひらサイズで正方形に近いデザインとし、前面部のほとんどをレンズが占める。シャッターボタンはなく、レンズまわりのシャッターリングか、画面をタッチして撮影する。画面は2.8型液晶を採用。これを90度まで持ち上げられる仕組みとしたことで、上から撮ったり、下から見上げるといったアングルでの撮影も簡単にできる。
また、「クリエイティブショット」と呼ばれる同製品独自の機能は、1回シャッターを押すだけで、構図や色調、露出を変更した5枚の画像を、PowerShot Nが提案。オリジナル画像を含めて6枚の写真が一度に撮影できる。
そして「ワンタッチスマホボタン」では、かばんにしまったままの状態でPowerShot Nから画像を取り出して、スマートフォンを使ってSNSで写真をアップするといった使い方が可能だ。しかも、わずか2ステップでスマートフォンに接続できるようになっている。
キヤノンMJでは、「Facebookの『いいね!』を押してもらえる写真を撮影するのが目的」と、PowerShot Nの狙いを語る。
さまざまなアングルから撮影できるようにしたこと、1度の撮影で自分では考えつかないような構図の写真が撮影できること、そしてスマホと手軽につながり、SNSにアップできるという機能は、すべてFacebookで「いいね!」といわれるための機能である。その点で、写真をキレイに撮影することだけにこだわってきた、これまでのデジカメとは一線を画している。
「いい写真を撮影して、SNSに公開し、それが他人から『いいね』と褒められると、さらにいい写真が撮りたくなるという『センスアップサイクル』に着目した」というのが、PowerShot Nの開発の発端にある。
スマホとの競合が取り沙汰され、それが出荷台数減少の要因とされていたコンパクトデジカメが、スマホとの共存という、まさに逆張りの観点から開発した製品が、このPowerShot Nだといえる。
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