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カカオトークの戦略--朴代表へのインタビューで見えた差別化への考え方 - (page 5)

許 直人(ループス・コミュニケーションズ)2013年01月23日 14時49分
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カカオゲーム

 日本ではソーシャルゲームプラットフォームが四半期で400億円を超える売上規模に達している。モバイルコミュニケーションの分野でも、カカオゲームはアイテムの月間売り上げが好調のようだ。LINEもLINE POPがGoogle Playの売り上げランキング上位に入っている。LINEも、今後APIを公開していくようだが、カカオジャパンではすでに日本でも問い合わせベースでAPIの提供をはじめているとのこと。

 日本国内ではMobage、GREEが拡大する際にソーシャルアプリケーションプロバイダーの争奪戦が話題になったが、カカオトークはどのように営業活動しているのだろうか。

 「基本的にAPIを公開するので使ってください、というスタンスであり、積極的な営業活動はしない方針です。今は、日本国内におけるプラットフォーマーとしてのプレゼンスをきっちりと確立したい。ソーシャルアプリケーションプロバイダーに対してはそれが一番の魅力になるはずです」(朴氏)

 複数のゲームプラットフォームが乱立した際、ユーザーが選ぶ基準は魅力的なゲームのラインナップになる。特にコンシューマーゲームメーカーや、IPを持っている出版社がどこを選ぶのか。ソーシャルゲームで莫大な収益を上げるMobage、GREEもスマートフォンのゲームプラットフォーム展開については過渡期の段階と考えられるが、互換性のないAPIにベンダーを引き込むには苦労するかもしれない。

着せ替えテーマ

 
 

 カカオトークでは、自分の気分やお好みに合わせメニューデザインや背景を全体的に変えられる「無料着せ替えテーマ」を提供している。

 LINEでもトークルームをカスタマイズできるが、カカオトークではトップ画面や設定画面までも好みのテーマを適用できる。このような「見た目」を変更できる機能は、特に女性には支持されるだろう。

 この機能はYahoo!メッセンジャーのテーマ機能を彷彿とさせる。テーマの外部提供やマネタイズなどのアライアンスビジネスがあり得るとしたら、ヤフーとの連携もさらに生きてくるのかもしれない。

運営組織

 アプリケーション開発において、外から見えるUIや機能的特徴を「外部設計」と呼ぶ。

 この外部設計やそのコンセプトは利用者だけでなく競合からも丸見えであるため、模倣が容易でなかなか差別化要因にはつながらない。当初はサービスごとに異なるUIも、ベストプラクティスが確立すると途端に各社横並びになってくる。スマートフォンのインターフェースや、ソーシャルゲームの基本設計などを考えてみてほしい。良い外部設計は、いずれ真似される運命にある。

 一方、システム開発において競合にもっとも模倣されにくいのは組織や企業文化である。目に見える部分をどんなに真似しようとも、承認プロセスの冗長な組織は改善サイクルがユーザーニーズに追いつかないし、リスクを許容しない企業文化を持つ組織は既に確立したビジネスモデルに後発としてしか参入できない。

 各社似通った機能を提供している今、差別化要因を生み出す組織の体制はどのようになっているのだろうか。

 目黒区にオフィスを構えるカカオジャパンの人員は現在60人程度。そのうち20人がヤフーからの出向で、そのほとんどがエンジニアだという。ヤフーの人材について、カカオジャパンの朴氏は「すごいエンジニアをそろえているな、というのがヤフーに対する今の印象」と満足気だった。

 一方、機能追加の方向性やプロモーションの主導権など、サービスやプロダクトの企画・開発体制は完全にヤフーから独立しているようだ。ただし、プロモーションでヤフーの媒体やリソースを利用する際は都度調整しているという。

 また、組織を作る上では現場の意見をなるべく経営に取り込めるように配慮されているのだそうだ。社長をはじめ全社員に英語のニックネームがある。社長のことを「社長!」と呼ぶ社員はおらず、みんな「Frodo!」とニックネームで呼び合うとのことだ。

 また、社内の意思決定プロセスはわずか2段階。チームで話し合ってチームリーダーが承認、それを社長が承認すれば方針は決定となる。

 「ネットの経験は豊富にある経営陣でも、モバイルでユーザーが求めるコミュニケーションが何かなんてものは想像でしかない。現場主導で仮説を立て、とにかく試してみることが重要だと考えている」(朴氏)

 チームは開発、デザイン、企画といった機能ではなく、目的によって分けられている。プランナーもデザイナーもエンジニアもみんな一緒に話し合い、決めたことはみんなでやる。そういう文化を大切にしているのだそうだ。

メッセージングサービスのこれから

 エンタメ、情報、教育、あらゆるコンテンツビジネスには商品となる「コンテンツ」とユーザーへデリバリする「流通」の2つの要素が必ず存在する。メッセージングサービス、コミュニケーションインフラはそれ自体ではマネタイズしないものの、この「流通」を押さえることでペイドメディアのような広告ビジネスも、手数料を取るようなコンテンツビジネスも仕掛けられるなど大きな可能性を秘めている。

 実際、現在でも各メッセージングサービスは通話やSMSのような基本的なニーズを満たしつつ、マネタイズはデジタルコンテンツの販売や公式アカウントによる広告ビジネス、そしてゲームなど、通話やメッセージとは別の部分でしている。背景に非常に安いインターネットの通信コストがあることに注意を払っておきたい。通信キャリアが自社ビジネスと競合するジレンマを乗り越えてこの分野に参入してきたり、インターネット通信料を従量課金に変更した場合に大きなインパクトがあるからだ。

 いずれにせよ、メッセージングサービスという分野は「次世代モバイルコンテンツビジネスの流通網の主導権争い」という非常に大きな可能性を秘めた分野だ。カカオトークをはじめ、各サービスがどう展開するかだけでなくFacebookや通信キャリア、OSを提供する企業などがどう参入してくるかも含めて引き続き注目していきたい。

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許 直人
株式会社ループス・コミュニケーションズ
「In the looop」編集長
1978年生まれ。ソーシャルメディアを中心とした情報サイト「In the looop(イン・ザ・ループ)」編集長。個別企業に対して、ソーシャルメディアを活用した新規事業構築や運用プロジェクトのマネジメントについての支援業務にも携わる。プロジェクトマネージャおよびシステムエンジニアの経験を持ち、ループスでは主に大規模システム開発案件のマネジメントに従事。アジャイルと計画駆動型マネジメントの両立を模索した。開発言語はJ2EE、J2SE、PHP、Ruby、ColdFusion、COBOLなどを経験。WEBシステム、マーケティングなど多様な視点から次世代に求められる顧客コミュニケーションのあり方を日々模索している。FacebookTwitterでも積極的に発信している。

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