iDisk、.mac、MobileMe、そしてiCloud。Appleのネットサービスはお世辞にも上手くいったとは言えないものが多い。上手く動作しなかったり、ダウンが起きたり、他のクラウド専門のアプリに比べて機能や自由度で2、3歩遅れることは珍しいことではなかった。iCloudはiOSユーザーに無料で5Gバイトのバックアップ空間を提供するということでユーザーを伸ばしているが、現状それ以上の使い勝手が評価されているわけではない。
しかし2013年以降、Appleのクラウドへのシフトは加速するかもしれない。
ご存じの通り、iOS 6の地図問題を始めとした社内の不調和を払拭すべく、10月にApple始まって以来と言われる大幅な組織改編が行われた。最も大きな変化は、これまでスティーブ・ジョブズ氏の側近とも言われたスコット・フォーストル氏が役員を退任することだ。そして既存の役員の担当範囲を拡大させる形で、業務の範囲を整理した。この整理は、非常に納得感のあるものだった。
ジョナサン・アイヴ氏がプロダクトデザインに加えてソフトウェアのユーザーインターフェースも担当することになった。またクレイグ・フェデリギ氏がOS XだけでなくiOSのリーダーになり、OSを統括するようになった。そしてエディー・キュー氏がiTunes、App Store、iBook Store、iCloudに加えて、Siriと地図を担当することになった点だ。
こうした組織の統合によって、デバイスとソフトウェアのユーザー体験、OSプラットホーム、オンラインサービスがより深い統合と調和を見せるようになるのではないか、と予測する。そしてそのきっかけとして、11月にリリースされたiTunes 11での体験がベンチマークになる。
クラウドへのシフトは、我々消費者の言葉で言い換えれば、「(データの)所有から、所有しない」方向に変わるということだ。iTunes 11の音楽ライブラリは、実際にMacに保存されている音楽に加えて、iTunes Storeで購入済みの楽曲もリストされる。必要であればその場でダウンロードできる仕組みだ。
Apple TVを使っているとより分かりやすい。購入済みの楽曲を再生することができる他、米国などで提供されている自分のライブラリの情報から所有しているコンテンツを認証・利用できるiTunes Matchでは、CDから読み込んだ音楽であってもサーバからダウンロードして利用できるようになる。
特に前の項目で進むモバイル化によって手元のストレージのサイズが小さくなることを考えると、クラウドを意識せずに利用できるようにする連携は不可欠で有り、ユーザーへのメリットも大きくなる。
こうした「意識しないクラウド活用」が、iTunes以外にも拡がっていくことが見込まれ、これがAppleのクラウドへのシフトとして認識できるようになると考えている。
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